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» 2020年10月07日 08時46分 公開

米加州の脱ガソリン車 各社戦略見直しへ

米カリフォルニア州のニューサム知事が9月24日、州内で販売される新型車は2035年までに全てゼロエミッション車とするよう義務付けると発表した。

[SankeiBiz]
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 米カリフォルニア州のニューサム知事が9月24日、州内で販売される新型車は2035年までに全てゼロエミッション車(ZEV)とするよう義務付けると発表した。驚きをもって報道されたが、これは重要な意味を含んでいる。つまり、自動車メーカーは小手先では対応できないことを表している。今回はこれについて筆者の考えを述べてみたい。

他州に拡大の可能性

 カリフォルニア州には「ZEV規制」という法律がある。1990年に州大気資源局(CARB)が施行したもので、州内で一定台数以上を販売する自動車メーカーに対し、販売する自動車の一定比率以上をZEV対象車である(1)電気自動車(EV)(2)燃料電池自動車(FCV)(3)プラグインハイブリッド車(PHV)−とすることを義務付ける制度である。

 米国では原則として連邦政府が各種規制を制定するが、環境問題に関しては、カリフォルニア州だけが独自に制定することが認められてきた。また、他州もカリフォルニア州の規制を採用することが可能であり、現在は10余りの州がZEV規制を採用している。

 2020年における「クレジット」と呼ばれる排出枠の獲得義務は、全販売台数の9.5%であり、将来的には2025年で22%まで引き上げることが決まっている。これに対し、自動車メーカーは、自社でZEV対象車を販売するか、もしくは他社からクレジットと呼ばれる権利を購入して対応することが求められている。このため、多くの自動車メーカーは、毎年のZEV規制数値に対して、ギリギリの台数を生産して販売するか、足りない場合は他社からクレジットを購入して対応するなど、どちらかといえば消極姿勢だった。

 その結果、日系自動車メーカーでは、日本での販売台数は極めて少ないものの、カリフォルニア州だけにZEV対象車を投入するなど、明らかにZEV規制目的と思われるような政策を取る企業もあった。また、自社で足りない分は、米EV大手テスラなどクレジットを多く持つ企業から購入することが多かった。情報公開が進んでいる米国ならではと思えるのが、クレジットの売却・購入企業名とそのクレジット数がCARBのホームページで公開されていることである。

 ZEV規制で現在制定されているのは25年までであり、これまで毎年2.5%の増加であったことから、筆者の予測でも35年で50%前後であった。しかし、今回の発表はそれをはるかに上回るものであり、35年で100%となる。この達成のためには、今後10年間で毎年8%前後引き上げなければならない。つまり少量のEV、FCV、PHV投入ではとうてい対応できず、自動車各社の製品ラインアップをどうするのか、事業戦略の見直しまでもが必須となるのであろう。

PHVの存在意義

 もう一つの懸念もある。あくまで筆者の臆測に過ぎないが、PHVの存続意義である。EVを著しく増加させようとすれば、充電ステーション設置数でも急激な拡充を図るであろう。これまでEVは航続距離に不安があり、PHVでは電池がなくなってもガソリンで走れることから、ユーザーの不安を払拭する意味でPHVが受け入れられてきた。

 しかし、ここにきて、35年以降はガソリン車販売禁止ということになれば、市場ではその時点でガソリン車は存在するものの、ガソリンスタンドは市場が縮小するため、急激に廃業が増えるのではないだろうか。

 いや、もっと前から加速するかもしれない。現に、米国では現在15万カ所あまりガソリンスタンドがあるが、日本と同様に、毎年ガソリンスタンド数が減少している。今回の発表はそれを加速させるであろう。またユーザー視点からも、ガソリンスタンド減少していく状況下で、PHVを購入選択肢と入れてよいかどうか迷うであろう。

 また、次の段階、例えば35年にゼロエミッションを達成した段階で、40年前後にはZEV対象車からPHVが外される可能性があるように思えてならない。PHVは、構造が複雑である半面、ガソリン車とEVの欠点を補うという利点を持っていた。しかし、今回の発表はそれすらも見直しの機会となるのかもしれない。

【プロフィル】 日本電動化研究所 代表取締役・和田憲一郎

 わだ・けんいちろう 新潟大工卒。1989年三菱自動車入社。主に内装設計を担当し、2005年に新世代電気自動車「i−MiEV(アイ・ミーブ)」プロジェクトマネージャーなどを歴任。13年3月退社。その後、15年6月に日本電動化研究所を設立し、現職。著書に『成功する新商品開発プロジェクトのすすめ方』(同文舘出版)がある。福井県出身。

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