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» 2020年10月09日 10時40分 公開

進行する重大経済リスク 今すぐに会社改造に着手を

環境激変に対する本質的な組織能力を高める、いわゆる「コーポレートトランスフォーメーション(CX)」活動による会社改造が重要となる。

[SankeiBiz]
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 日本企業の目前に広がる間近の景色として、地政学的な観点から見ると米中の対立のビジネスへの影響、直近の新型コロナウイルス・ショックとその後の社会変容が大きなリスク要因だが、より長期のマクロ経済的視点に立つと、世界全体が日本経済の長期停滞の後を追うように低成長のデフレモードに陥る一方で、株価を中心に資産価格が上昇し、いわばバブルの発生と崩壊を繰り返しやすい状態に陥りつつある問題がある。

※画像はイメージです(Getty Images)

スタグフレーションの心配も

 日常生活で購入するフロー的な消費財の価格が上がらない一方で余剰資金流入によって株式や不動産といったストックの価格上昇が続く「フローデフレ・ストックインフレ」の状態は、フローの裏付けのないストック価格上昇になることから、どこかのタイミングでストック価格の暴落を招きやすい。

 そして暴落による経済的なショックに対してさらに大規模な金融・財政出動で対応することが多いため、再びカネ余りの状態に戻ってしまう。結果としては常にバブルの発生と崩壊のリスクをはらんだ不安定な状態が続く。

 これはバブル経済崩壊以降の日本の姿であり、リーマン・ショック以降は欧米経済のマクロ的傾向でもある。今回のコロナショックは長期的にこの振幅をより大きくする可能性がある。

 かかるボラティリティーの高い状況下において、今後を予測することは難しい。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が長期化する中、余剰資金は引き続き政府債務の拡大と並行してストックに向かい、当面は「フローデフレ・ストックインフレ」が続くだろう。

 コロナ・ショックが引き起こす社会不安・信用不安が貨幣価値の減少につながる場合、輸入材価格の高騰などを通じた不況下のインフレ、つまりはスタグフレーションの発生も最悪のシナリオとして想定しうる。いずれにせよ、いくつものシナリオが描きうる状況なのだ。

経済人の憂鬱をどう晴らすか

 経営者としてこの状況に対する対処方法は、いかなるシナリオにも対応できるように企業活動のレジリエンスを高めることしかなく、そのため環境激変に対する本質的な組織能力を高める、いわゆる「コーポレートトランスフォーメーション(CX)」活動による会社改造が重要となる。具体的には、適時かつ素早い意思決定を可能とする組織構造への転換と、意思決定に必要な事業・製品ごとの収益の可視化、強固な財務基盤作り、加えて、それらを実行しうるリーダーの育成およびその抜擢(ばってき)のための仕組みづくりが必要になる。

 悩ましいのは、これらのCX活動が一朝一夕に実現しうるものではなく、10年単位の長期戦で取り組む必要があることだ。特にリーダーの育成とその抜擢のための仕組みづくりは、会社の人事制度やその運用プロセス、ひいては組織風土全体を改革する必要があるため、一層時間がかかる。

 リーダー層を担いうる人材が社会全体で枯渇しつつある中、社内人材だけで対応できるのかという根本的な課題も存在する。日々の業務課題にも次々と直面する中、10年単位で生起する破壊的危機やデジタル革命のような破壊的イノベーションに対峙(たいじ)する根本的な会社改造が後回しになることは想像に難くない。

 しかし、質と量の両面での大きな変化が起きた時、新卒一括採用の終身年功サラリーマン日本人が圧倒的多数の同質的、固定的な組織体が脆弱(ぜいじゃく)なことは自明である。コロナショックを好機ととらえ、今度こそ積年の課題に本格的に手を付けるべきだ。

 さまざまな課題について、緊急性やCX上のインパクトなどの観点からテーマごとに優先順位を付けつつ、リスクの高い経済環境でも生き残りうる体制を築くための会社改造を今すぐにでも開始すべきである

【プロフィル】経営共創基盤CEO・冨山和彦

とやま・かずひこ 東京大学法学部卒業、スタンフォード大学経営学修士(MBA)修了。1985年ボストンコンサルティンググループ入社、産業再生機構代表取締役専務(COO)などを経て2007年経営共創基盤(IGPI)設立。パナソニック社外取締役。和歌山県出身。

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