パナソニックのトップとして創業家以外では最長となる就任9年目を迎えていた津賀一宏社長が交代する。就任直後に巨額赤字を出したプラズマテレビ事業の撤退を決断し、半導体や液晶パネルからの撤退など不採算事業のリストラを断行した一方で、最大の課題だった新たな収益事業の柱は見いだせないままの退任となる。(山本考志)
「収益を伴う成長はそんなに簡単なことではない。じっくり仕込みながら足元を固めることが必要だ」
津賀社長は13日、大阪市内での記者会見で自身の8年半をこう振り返った。
平成24年6月の就任時は、7千億円を超える最終赤字を抱えたどん底の時期。立て直しを進めたのが、不採算事業の構造改革だ。巨額赤字の最大要因ながら、それまでの巨額投資から事業の継続判断を留保してきたプラズマテレビ事業から撤退、業績をV字回復させた。さらに家電などの消費者向け事業から企業向けの製品やソリューションに注力し、収益を出すビジネスモデルへの転換を目指した。
そうした中で、成長事業と位置付けたのが車載事業だ。ただ、通期では一度も黒字化できず、さらに最近は開発費の増大や米中貿易摩擦が打撃となり、令和3年度までの中期経営計画では収益の改善が必要な「再挑戦事業」に格下げ。数千億円を投じ平成29年1月から生産を開始した米電気自動車(EV)メーカー、テスラ向けのEV用電池の北米事業も、令和元年10〜12月期の四半期ベースで初めて黒字化したばかりだ。
構造改革では昨年、半導体事業の売却や液晶パネル生産からの撤退などを決め事業の選択と集中を進めたものの、昨年5月に太陽電池事業での協業を合意した中国大手GSソーラーへのマレーシア工場などの売却が7月に頓挫。昨年度で100億円以上の赤字を出したテレビ事業の改革も残る。
津賀氏は「(収益の柱をつくることは)簡単なことではないと分かった」と述べた。後継の楠見雄規常務執行役員について「現場に密着してメンバーをリードしながら改革できる」とし、持ち株会社制への移行で再出発を図ってほしいとの考えをにじませた。
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