新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、集団感染を招きやすいとされる3密(密閉、密集、密接)対策の効果を可視化する取り組みが広がり始めている。冬場は換気だけでなく湿度、温度などの要素を適度に保つ必要があり、夏場に比べて対策は難しさを増している。専門家は「可視化することで、それぞれの実情に合わせたよりきめ細やかな対策が可能になる」と指摘する。(荒船清太)
和歌山県白浜町にある南紀白浜空港の搭乗口前の待合室のディスプレーには、騒音や二酸化炭素濃度など、普段は見慣れない数値が色付きで並んでいる。いずれも、3密を可視化する数値だ。運営する南紀白浜エアポートは「ご利用される皆さま並びに従業員へ少しでも安心をご提供することができれば」とする。
可視化システムを開発したシステム会社「ウフル」(東京都港区)によると、二酸化炭素濃度が示すのは、「密閉」の度合いだ。人間は酸素を吸って二酸化炭素を吐くため、密閉空間では段々酸素が減って二酸化炭素が増えていく。その性質を利用し、二酸化炭素濃度の増減で換気の傾向が分かるわけだ。
近距離での会話などを示す「密接」は、周囲の騒音レベルで把握。人感センサーによって、一定空間にどれだけ「密集」しているかも表示する。
ウフルでは場所によって普段の平均値を測定。普段より高ければ赤、低ければ青に表示するなど、利用者の視覚に訴える設計にしている。レストランやジム、理髪店などでも試用が始まっているという。
すでになじみのある数値の中にも、新たな意味が見いだされ始めたものもある。
筆頭は湿度だ。政府の新型コロナ分科会も、感染防止対策の一つとして「40%以上を目安」とした換気をしながらの加湿を推奨している。
理化学研究所は、スーパーコンピューター「富岳」を用いて、せき込んだときの飛沫(ひまつ)が1.8メートル離れた正面の人にどれだけ届くかを計算。空気が乾燥していれば飛沫のエアロゾル(浮遊微粒子)化が急速に進み、湿度が30%以下になると、届く飛沫は60〜90%のときの2倍以上に増えることが分かっている。
一方、時間帯によって不特定多数の利用者の密集度合いが変わる鉄道会社などでは、これまで主に不快感を避けるために利用されてきた「混雑率」の再活用が進む。
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