「感情がない」「冷たい」。機械にそんなイメージを持つ人は多い。だが、柔らかくて温かく、時に涙を流す機械があれば、どんな印象を抱くだろうか。新型コロナウイルスの感染拡大で人と人との接触が敬遠される中、ロボットに期待される役割が変わるかもしれない。
山形大が昨年10月に開発を公表した犬型ロボット「ゲルハチロイド」。お座りの状態で高さは53センチ。秋田犬をモデルにしており、本物らしさを追い求めた細部へのこだわりが特徴だ。
3Dプリンターで作製した骨格をシリコーンで覆って柔らかい触り心地を、中に入れたヒーターで40度ほどの「体温」を再現。眼球は水分を取り込んだゲル素材で作り、「涙」を流すこともある。鼻からはリラックス効果のある香りも出るという。
機械には本来、与えられた明確な役割があり、それを狂いなく実行することが仕事だ。しかし、柔らかくて人間に近い素材のロボット実現を目指すこのプロジェクトは、趣旨が異なる。ロボットがいかに人間の癒しとなり、コミュニケーションの潤滑油となれるかを重視しているためだ。
最新のゲルハチロイドは3代目。社会情勢を踏まえ、少しずつ進化を遂げてきた。
初代は令和元年9月の展示会で披露された。柔らかい素材は体の一部だけだったが、センサーやカメラを搭載し、触れた人の情報を人工知能(AI)で分析できた。相手の感情に応じ、振動や光で「返事」もした。昨年9月に登場した2代目はコロナ禍を反映して首に温度測定器をぶら下げ、のぞくだけで体温が測れる機能が目玉だ。
今後、触った人の汗や肌を分析し、気軽に健康チェックができる機能を付け加える構想もある。ゲルハチロイドが人の共感を呼ぶには何が必要なのか。今後、最新テクノロジーを紹介する日本科学未来館(東京)などで展示し、実証実験で方向性を探っていく。
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