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» 2021年01月27日 09時17分 公開

コロナ禍の飲食店の救世主 レトルト食品に注目

新型コロナウイルス感染拡大の影響による売り上げ減少に悩む飲食店が、看板メニューのレトルト食品加工に活路を見いだそうとしている。

[産経新聞]
産経新聞

 新型コロナウイルス感染拡大の影響による売り上げ減少に悩む飲食店が、看板メニューのレトルト食品加工に活路を見いだそうとしている。大阪では少ない注文数でも加工を請け負うビジネスがスタート。在宅時間の増加で、手軽に家で楽しめるレトルト食品の個人消費は伸びているといい、時短営業などで苦境にさらされる飲食店にとって店の味を広く多くの人に届けるチャンスにつながりそうだ。  (北村博子)

味も見た目も遜色なし

 「年末年始の宴会はずいぶん減りましたが、レトルトがよく売れたおかげで助かりました」

レトルト商品は保存期間も長く、コロナ禍でもお店の味が家庭で手軽に味わえる

 ミナミのふぐ、すっぽん料理店「法善寺浅草」は昨秋から、「すっぽん鍋セット」(1〜2人前、3850円)のレトルト食品販売を始めた。

 店主の辻宏弥さんは「昨年はコロナ禍で、店に食べに来られないお客さんから『持ち帰りたい』『人に贈りたい』という声が日に日に増えていました」と振り返る。そこで、添加物を加えなくても、半年から1年間保存できるレトルトの開発を決めた。臭みを感じさせない、透明で美しいスープの味わいが同店のすっぽん鍋の特徴。レトルト加工しても「味も見た目も遜色がない」という。

 辻さんはまた、準備した食材が余った場合、レトルトだと長期間保存できるため「食品ロスにもつながる取り組み」と話す。

仕事も飲食店も守る

 法善寺浅草のレトルト食品加工を請け負ったのは、食品輸送会社「HORICOO(ホリコー)」(大阪市淀川区)。冷蔵車などを利用して飲食店に食材を輸送することが主な事業だ。

 ところが取引先の飲食店がコロナ禍の影響を受けた昨春以降、配送の仕事は激減。堀内信幸社長(58)は、厨房(ちゅうぼう)で廃棄処分される食品が増えるのを目の当たりにして胸を痛めていた。そこで「自分たちの仕事と取引先の店の味、両方を守りたい」と一念発起して、昨年9月、35パックの少数から注文できるレトルト食品加工事業に参入。食品衛生法に基づく営業許可を取得し、機材を購入するなど約600万円かけて自社工房を整備した。

 レトルト食品を製造するには、120度の温度で10分以上加熱殺菌する必要があり、その過程で本来の味を損なわないようにするのは難しい。開発には注文主と味の調整を繰り返しながら、約1カ月半かけているといい、関西を中心に24の飲食店や漁協組合などのメニューの商品化を進めている。大阪府藤井寺市のエスニック料理店「ハルワ食堂」のカレーを購入した河南町の自営業、高橋真樹さん(39)は「店の盛り付けを思い出しながら自宅で食べると店の味そのままでした。お店を応援したい気持ちもあるのでまた買いたい」と話す。

 HORICOOでは作ったレトルトを取引先のスーパーや大阪(伊丹)空港の土産物店、専用のネットショップ「目利氣358(メキキ)」などでも販売して、販路を拡大している。

食品需要が急増

 食品販売データ調査会社の「KSP−SP」(東京都港区)によると、昨年4月に緊急事態宣言が発令されると、在宅率が上がったことなどから、手軽に食べられるカレーやシチューのレトルト食品の販売数が前年同月比で約30〜40%急増するなど、大きく数を伸ばした。大手食品メーカーのハウス食品も昨年は前年比で販売数が伸びたことを明かす。

 また、「無印良品」のブランドで知られる良品計画はカレーやパスタソース、丼などのレトルト食品を約70種類発売しており、「巣ごもり需要で、昨年の販売数は前年比約1.5倍となった」という。同社広報は「コロナ禍でも、お役に立てるのはうれしい。主力商品としてさらに拡大していく予定」とする。

 日本缶詰びん詰レトルト食品協会(東京都千代田区)によると、コロナ禍でレストランなどで使われる業務用のレトルト需要は落ち込んでいるが、「家庭用は増えている傾向にある。今後も在宅時間が長くなれば家庭用の需要は増えるのではないか」と予測している。

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