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» 2021年06月03日 07時48分 公開

パビリオン、高層ビルも木造で 夢の新パネルの可能性

「燃えやすく揺れにも弱い」という印象もあった木造建築。そのイメージを変える建材として注目されているのが、CLTと呼ばれる木材パネルだ。

[産経新聞]
産経新聞

 「燃えやすく揺れにも弱い」という印象もあった木造建築。そのイメージを変える建材として注目されているのが、CLTと呼ばれる木材パネルだ。断熱性に優れ強度もあって、環境にもやさしく、夢の素材ともいわれる。その特徴をPRしようと、CLTで巨大パビリオンを東京・晴海につくり、それを岡山県真庭市の蒜(ひる)山(ぜん)高原に移築するプロジェクトが行われた。設計監修は、世界的建築家の隈研吾さん。木の葉がスパイラルに舞い上がる様子をイメージしたパビリオンは今年7月公開予定で「風の葉」と愛称がつけられた。

移築整備の進む建築家、隈研吾氏が設計監修したパビリオン。CLTパネルを葉に見立て、風に舞い上がる様子をイメージしてデザインされた=岡山県真庭市蒜山(高田祐樹撮影)

東京から移築

 西日本を代表する高原リゾート地のひとつ、蒜山高原に姿をあらわした高さ18メートルの巨大パビリオンは、木材パネル360枚を組み合わせるようにしてできている。圧倒的な大きさだが、圧迫感はなく、風景になじむ。移築作業は大詰めを迎えており、7月中旬のオープンに向けて準備が進められている。

 パビリオンは当初、東京・晴海につくられ、令和元年11月に完成。2年10月に移築作業が始まるまで、CLTの魅力を伝えるイベントなどが開催されていた。

 実際にパビリオンをつくり移築することで、丈夫で再利用しやすいという特徴を知ってもらおうという試みでもあるという。

 真庭市の太田昇市長は「林業は真庭の基本。隈研吾さんのデザインしたパビリオンに多くの人が訪れれば、木材建築やCLTの素晴らしさを感じてもらえる」と期待を寄せる。

夢の建材

 CLTとは、直交集成板と呼ばれる建材だ。木の板を何枚も重ねてつくる木材パネルだが、従来品と異なるのは、木の繊維に対して平行ではなく、直角に交わるように板をはり合わせているところにある。このため、従来品に比べて強度が高い。

 丈夫なため、再利用も可能で、耐震性や断熱性にもすぐれており、高層建築にも使える。普及が進むオーストリアではCLTを使った24階建てのホテルも開業を予定しているという。

 1990年代から欧州を中心に研究されてきた新しい建材で、同じ強度のコンクリートと比べ重さは約5分の1と軽く、輸送しやすい。また、木材パネル自体が柱や梁(はり)になるため、建築物の部品点数も少なくなるので、施工期間も短縮できるメリットがあるという。

 政府も木を使った建造物を増やそうと、CLTの利点に注目。省庁間の連絡会議を設置するなどして普及策を検討している。

 東京五輪・パラリンピックでも、参加選手らの交流拠点となる「選手村ビレッジプラザ」で床材などにCLTが用いられているという。

岡山のヒノキ

 パビリオンが移築された真庭市は市の面積の約8割は森林で占められており、林業が盛ん。岡山県はヒノキの生産量が全国トップクラスで、豊富なヒノキ材を生かしてCLTの生産に挑戦してきた。

 真庭市に本社があるCLTの最大手メーカー、銘建工業の中島浩一郎社長は、ヨーロッパで実際にCLT建築を見て、需要が伸びていることを知ったといい「これまでの集成材生産の技術を生かせると判断し、量産を決めた」と話す。

 地元を中心にCLTを使った建物も徐々に増えており、CLTの活用建築物は岡山県内では59件(令和元年度、全国最多)あるという。

 CLTを使った小学校校舎では、木の心地よさを感じてくれるからか、校舎の床に子供たちが寝そべったり、壁にしがみついたりする様子も。中島社長は「鉄筋コンクリートの建築では見られないことです」と話していた。 (高田祐樹)

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