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» 2021年06月21日 09時45分 公開

30時間前に洪水予測 東大など 自治体に情報提供へ

豪雨による洪水を早期に予測するシステムを東京大などが開発し、23日から自治体向けに警戒情報の提供を開始する。

[産経新聞]
産経新聞

 豪雨による洪水を早期に予測するシステムを東京大などが開発し、23日から自治体向けに警戒情報の提供を開始する。気象庁の洪水予報と比べ迅速に予測できる利点があり、令和元年の台風による堤防決壊を30時間以上前に予測可能だったことを確認した。一般向けには公開しないが、自治体が早い段階で住民避難などを検討するのに役立ちそうだ。

 このシステムは河川の地形や水量、衛星の観測データに基づく流入雨量や雨雲の進路などの膨大なデータをコンピューターでシミュレーション(模擬計算)し、洪水リスクを予測する。東大と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の共同研究チームが開発した。

 全国を約1キロ四方の格子状に分割し、それぞれの区画について、洪水の規模と緊急性を考慮した独自の5段階の警戒レベルを1時間ごとに評価する。提供を受ける自治体だけがウェブ上で閲覧できる地図を警戒レベルごとに色分けし、リスクの分布がひと目で分かるようにする。

 チームは元年10月の台風19号で東日本を中心に142カ所の河川堤防が決壊した際の気象データを使い、実際の被害と比較してシステムの正確さを検証したところ、91%に当たる130カ所で決壊を予測することに成功し、平均で発生の約32時間前に予測できたことを確認した。

 気象庁の洪水予報は河川水位の実測値に基づくため確実性が高い半面、数時間前でないと予測できない課題がある。

 気象や洪水の予報業務は気象業務法で国の許可が必要と定められている。気象予報は平成5年の法改正で民間による一般向けの業務が解禁されたが、人命に直結する洪水予報は規制緩和の議論が始まった段階で、まだ許可されていない。

 このため今回の警戒情報は一般には公開せず、希望する自治体に共同研究用として限定的に提供する。九州や関東甲信越など洪水の被害が多い31自治体に提供する予定で、自治体側からは「早期の予測で住民避難の準備作業を十分に進め、円滑な避難行動につなげたい」と期待する声が寄せられているという。

 決壊を予測した場所で実際には起きなかったケースも多く、予測全体に占める「空振り率」は76%に上った。ただ、チームは「空振りした場所も安全だったわけではなく、早い段階での避難準備に役立つ」としている。

 チームの芳村圭・東大教授(水文学)は「洪水は地球温暖化などで高頻度化、激甚化が見込まれており、被害軽減に貢献したい」と話している。


■気象業務法

気象業務に関する基本的な制度を定め、信頼性の低い情報による混乱を防ぐことなどを目指す法律。民間気象会社への一般向け気象予報の解禁や気象予報士制度の導入など規制緩和が進められてきたが、洪水と高潮の予報業務は防災との関連性から、気象庁以外に「当面許可しない」とする審査基準で運用されている。

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