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» 2021年06月28日 08時51分 公開

『ネットフリックスvs.ディズニー ストリーミングで変わるメディア勢力図』大原通郎著 配信遅れる日本への警鐘

タイトルを見て「ネットフリックスとディズニーがインターネット動画配信で対決しているのは知っているよ」と思ったのなら、そんな人こそ読んでほしい。

[産経新聞]
産経新聞

 タイトルを見て「ネットフリックスとディズニーがインターネット動画配信で対決しているのは知っているよ」と思ったのなら、そんな人こそ読んでほしい。その知っているはずのことが歴史的背景を含めて事細かに書かれており、私もこの本にのめり込んだ。知っていたつもりのことを「そうだったのか」と思わせてくれるのだ。

「ネットフリックスVS.ディズニー ストリーミングで変わるメディア勢力図」

 この2社以外のアメリカのメディア企業の最新動向も書かれている。海外に取材したり、最新情報を英語の記事でチェックしている著者でなければ書けない内容だろう。

 2社だけでなく、アメリカをはじめとする海外のメディア企業は今、こぞってネットを使ったストリーミング配信に邁進(まいしん)している。事業の核を放送や劇場など既存の経路から、配信に据え変えているのだ。しかもすごいスピードと勢いで。

 日本でもテレビ局が有料もしくは無料の配信サービスに力を入れ始めたが、正直比較にならないことがこの本からわかる。これまでも遅れていたのに、さらに突き放されそうだ。著者・大原通郎(みちろう)氏の意図は自らも所属していた放送業界に警鐘を鳴らすことなのだろう。

 ページ数は多くはないがアメリカのローカル局が配信と再編で逆に勢いを増していることもリポートされている。この本のもう1つの価値がそこにある。日本だとキー局以上に沈んでいくしかないように見えるローカル局がアメリカでは元気なのだ。これはネットワーク局との関係の違いも大きいが、ストリーミングに本腰を入れることと、既存の枠組みを超えた資本の再構築で、日本でも可能ではないかと思えてくる。

 最後の最後に大原氏は「ローカル情報こそ重視される今この時」と書いていて、日本のローカル局への提言にも受け取れる。中身に価値がないのではない、伝え方を変えればいい、発想を変えるべき時だ。淡々とした文体の奥からそんな熱いメッセージが伝わってくる。デジタル技術を使って事業を変革する「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」のメディア版最新リポートとも呼ぶべき本書は、テレビ局の関係者以外にもイノベーションの参考書として役立つだろう。(日本経済新聞出版・1760円)

評・境治(メディアコンサルタント)

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