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» 2021年07月14日 08時12分 公開

富士フイルムHD「古森流」継承 ヘルスケア加速、追加のM&A模索も

バイオ医薬品の開発・製造受託事業で世界首位を狙う。事業構造転換の歩みは新経営陣の下でも続く。複写機事業など他領域の安定成長も課題となる。

[SankeiBiz]
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 富士フイルムホールディングス(HD)の後藤禎一社長は13日までに、産経新聞のインタビューに応じ、6月29日付で退任した古森重隆前会長の下で花開いたヘルスケア事業の成長を加速する考えを示した。バイオ医薬品の開発・製造受託事業で世界首位を狙う。事業構造転換の歩みは新経営陣の下でも続く。複写機事業など他領域の安定成長も課題となる。

富士フイルムHDのデンマーク拠点のバイオ医薬品原薬製造設備

 ヘルスケア事業の売上高は令和8年度に1兆円と2年度の1.7倍を目指す。今後3年間で会社全体の収益の3分の1をここで稼ぐ青写真を描く。

 最も成長性が期待できるのがバイオ薬の開発・製造受託事業だ。後藤社長は「新型コロナウイルス禍でバイオ薬の市場成長に弾みがついている」と述べ、得意の品質管理を用いてビジネスを拡大する考えを示した。

 6月下旬には、欧米の製造拠点での900億円の設備投資計画を発表した。メガファーマ(巨大製薬会社)から請け負う新型コロナワクチンや遺伝子治療薬などの原薬の生産能力を大幅に引き上げる。

 ヘルスケア事業の稼ぎ頭は医療機器事業だ。今年度からは、日立製作所から1790億円で買収した画像診断機器事業の収益が丸ごと上乗せされる。

 ただ、海外に目を転じると、ヘルスケア事業の競合は米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスなど強者だらけだ。これらに追いつき追い越すため、後藤社長は「広く間口を開けておくことが肝心」と追加のM&A(企業の合併・買収)も辞さない構えだ。

 複写機事業の強化も急務となっている。富士フイルムHDは米ゼロックスとの事務機器の販売提携やブランドライセンス契約を解消し、4月から「富士フイルム」ブランドで世界展開に乗り出したばかりだからだ。「ゼロックス」の名を使わずにどこまで戦えるかは未知数だ。

 コロナ禍で在宅勤務やペーパーレス化が定着してきたことも、逆風となっている。後藤社長は「紙のプリント枚数でいえば今は“底”だが、コロナ禍が落ち着いて出社比率を上げる企業が増えればある程度のレベルまで需要は回復する」と期待する。複写機を入り口にした法人顧客のデジタル化の支援サービスも強化する必要がある。

 富士フイルムHDは祖業の写真フィルムで培った技術を生かせる医薬品や化粧品市場に参入し、デジタル化の波を乗り越えてきた。大胆な事業構造転換が実を結び、同社はコロナ禍に見舞われた令和2年度に過去最高益をたたき出した。後藤社長は自社の強みを「技術を深く掘り下げていることだ」と言い切る。次の難局に備え、後藤社長は変革に挑み続けた「古森イズム」を継承しつつも、今の時代に合った経営を模索していくことになる。(米沢文)

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