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» 2021年09月17日 07時42分 公開

老朽インフラ問題解決へ技術進歩期待 

壊れた後に修繕する「事後保全」よりも「予防保全」の方が費用の縮減効果が大きいとのことだが、それでも国土交通省によると年間6兆円前後が必要と試算されている。

[SankeiBiz]
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 高度成長期に建設された社会インフラが老朽化を迎えている。道路、橋、ダム、送電網、学校、病院など、生活を支える基盤だ。壊れた後に修繕する「事後保全」よりも「予防保全」の方が費用の縮減効果が大きいとのことだが、それでも国土交通省によると年間6兆円前後が必要と試算されている。

 予算が確保できても、点検や修繕に必要なノウハウを持つ技術者の不足が懸念される。予防を検知するためには巡回が必要だが、広範囲になると人手と時間がかかる。高所での作業など、付随する危険をどう回避するかも重要な課題だ。自治体によっては財源、人員ともに不足するケースがあるという。取るべき対策が設備の維持管理ではなく、整理・縮小になると地域の過疎化につながる。

 この社会問題の解決に向けて、テクノロジーの活用が進められている。点検作業にはドローンが有力だ。高い場所の画像を撮影して点検する空を飛ぶものだけではなく、ダムを水中から点検するもの、煙突や水道管などの狭い箇所を点検するものなど多岐にわたる。空から見える場所であれば、衛星写真を使って道路や森の補修箇所を見つける取り組みも進められている。地上ではセンサーを使い、堤防下に決壊の可能性のある弱い部分がないか、水道管が破裂していないかなどを確認する技術もある。自動運転技術と組み合わせれば、人が介在せずに点検作業を行うことができる。

 画像など収集されたデータは人工知能(AI)で解析される。例えば、路面上の亀裂の画像から大きさや深さを推測する。ただ、分析を正確にするためには、AIに正しい情報を学習させる必要がある。このときに熟練した技術者の知見が生きる。この程度の亀裂だと問題がないのか、補修が必要なのかを見極めてAIに学習させる。サンプルが多いほどAIの分析は正確になる。優秀な技術者がリタイアする前に、その知見を蓄積して伝承していかなければならない。

 英国では道路補修を自動化するプロジェクトが進められている。道路上をドローンが航行し、亀裂や陥没を見つける。亀裂の上に着陸して、装着した3Dプリンターでアスファルトを出力して補修する。一連の作業は、すべて人手を介さず自動的に行われ、2050年の実用化を目指すという。

 大切な予算を有効活用するために、技術の進歩を加速し、誰もが技術を簡単に使える仕組みをつくり上げていただきたい。技術を勉強した若者と熟練した技術者が一緒になって社会課題を解決することが、価値ある技術の承継とデジタル人材育成につながる。(小塚裕史)


 こづか・ひろしビジネス・コンサルタント。京大大学院工学科修了。野村総合研究所、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ベイカレント・コンサルティングなどを経て、平成31年1月にデジタル・コネクトを設立し、代表取締役に就任。主な著書に『デジタルトランスフォーメーションの実際』(日経BP社)。兵庫県出身。

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