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» 2021年09月30日 07時51分 公開

作業時間7割減 ロボットで変わるブドウ農園

草刈り、農薬散布、運搬、全てリモコンひとつで。ブドウ栽培が盛んな大阪府太子町で、農作業へのロボット導入や機械化が進んでいる。山の斜面を利用した農園では一年中、重労働を強いられるが、導入により作業時間の7割削減という効果も表れた。

[産経新聞]
産経新聞

 草刈り、農薬散布、運搬、全てリモコンひとつで−。ブドウ栽培が盛んな大阪府太子町で、農作業へのロボット導入や機械化が進んでいる。山の斜面を利用した農園では一年中、重労働を強いられるが、導入により作業時間の7割削減という効果も表れた。国もロボットやAI(人工知能)を活用したスマート農業の導入を進める中、太子町の取り組みも注目を集めている。

運搬ロボットを使った収穫作業の様子=令和2年7月、太子町

重労働から解放、危険回避にも

 大阪府南東部に位置する、大阪市の中心部から30キロほど離れた郊外の太子町。晴れた日に奈良県と接する金剛・葛城の山々を仰ぎ見ると、斜面は太陽光を反射し銀色に輝いている。一帯が、ぶどうを育てるビニールハウスで覆われているためだ。

除草ロボットを使った草刈り作業の様子

 8月、急勾配の山道沿いにあるハウスの中では、すでに来シーズンに向けた農園の手入れが始まっていた。ハウスの片隅に立って、リモコンで除草ロボットを操作していたブドウ農家の山本佳江さん(45)は、「これまでは傾斜のきつい畑に踏ん張って立って、重い草刈り機を持ってやる重労働でした。ロボットなら歩き回ることなく雑草も簡単に刈れる」とほっとした表情で話す。従来は刃が回転する機械のベルトを肩から掛けて人力で機械を左右に振って草を刈っていた。刃に石が触れると飛び散る危険を伴う重労働だったという。

 一方、除草ロボットは長さと幅がそれぞれ1メートルほどの電動四輪駆動の車両型。車両の下の刃が高速回転して雑草を刈る。ブドウ栽培が盛んな長野県のロボットベンチャー企業「イーエムアイ・ラボ」が開発し、府内のブドウ農園の特徴である狭く、急斜面でも使える特別仕様。跳ねる石を防ぐ機能もある。山本さんがリモコンで操作すると、ハウス内を自由に動き回り、伸びた雑草はあっという間に刈られていった。

数字に表われた効率化の結果

 太子町のブドウ栽培にロボット導入を進めてきたのがNPO法人「太子町ぶどう塾」(同町)だ。今年から除草ロボットを希望する農園に貸し出している。佐藤正満理事長は「安全性が高く、作業効率も良い。慣れれば高齢者でも安心して使える」と説明する。昨年度は、府とJA大阪南と協力して1年間の実証実験を実施。すると、効果がはっきり見えてきたという。

 例えば、農園10アールの除草にロボット導入したところ、従来の機械を用いて112分かかっていた作業が約68%減の37分に短縮された。農薬散布は手作業で74分だったのが約13%減の65分になり、また、360キロのブドウを運搬する際、人力だと30分かかった作業が、ロボットを使うと約33%減の20分に縮まったという。

 取り組みのきっかけには、高齢化や人手不足が大きく影響している。

 太子町でのブドウ栽培は明治末期から大正時代にかけて広がり、経済成長によるブドウ消費の増加を受けて平成初期の栽培面積は約160ヘクタールまで拡大した。ただ、その後は農業資材の高騰や、後継者不足により縮小の一途をたどった。平成18年にはピーク時の3分の1の約60ヘクタールに減少、今では約40ヘクタールとなり、従事者の平均年齢も70台前半まで高齢化が進んでいるからだ。

収穫期予想のスマート農業も

 国もロボットやAI、あらゆるモノがインターネットにつながるIoTなど先端技術を農業の生産現場にいかそうと「スマート農業実証プロジェクト」を進めている。令和元年度から始め、これまで全国182地区で実証実験が進む。

 農林水産省の担当者によると、プロジェクトを始めたころは、ロボット導入など作業の機械化が多かったが、近頃は、機械化により蓄積されたデータを分析して収穫時期や収穫量を予見する、経営に直結する実験も進んでいる。また、新型コロナウイルスの影響で問題が加速している労働力不足にもスマート農業が役立つとされ、担当者は「農業は機械化がなかなか進んでいない分野だが、条件不利地こそ、スマート農業を活用し課題解決にいかしてほしい」と話す。

 太子町の昨年度の実証実験に参加した、府の南河内農と緑の総合事務所の山口洋史さんは「今まで農家ごとに勘と経験に頼っていた作業を効率よく進められる」と手応えを実感している。太子町のブドウ農園で自動化が進めば、労働力不足による地元産業の縮小に歯止めをかける一助になるはずだ。太子町ぶどう塾の佐藤理事長は「高齢者、女性でも簡単に操作できるようになる。今後も地元名産を守っていくのが楽しみだ」と期待している。

(大島直之)

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