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» 2021年10月21日 07時32分 公開

石油元売り大手が再エネ強化 ENEOSは巨額買収

石油元売り大手が再生可能エネルギー事業を強化している。脱炭素の波に乗り遅れまいと、再生エネ事業の拡大を通じ、石油ビジネスに依存した従来の事業構造からの脱却を加速する。

[産経新聞]
産経新聞

 石油元売り大手が再生可能エネルギー事業を強化している。ENEOS(エネオス)ホールディングス(HD)は今月、国内有数の再生エネ事業者であるジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE、東京都港区)を約2000億円で買収すると発表。出光興産は太陽光などの再生エネ電源の開発を推進し、コスモエネルギーHDは風力発電の拡大を図っている。脱炭素の波に乗り遅れまいと、再生エネ事業の拡大を通じ、石油ビジネスに依存した従来の事業構造からの脱却を加速する。

 「世界が脱炭素・循環型社会に向かう中、ENEOSグループの事業構造を抜本的に変革する重要な契機になると確信している」。ENEOSHD傘下の事業会社、ENEOSの井上啓太郎常務執行役員は今月11日のオンライン記者会見で、JRE買収の意義をこう強調した。

 JREの株主である米ゴールドマン・サックスとシンガポール政府投資公社から、来年1月下旬ごろに全株式を取得する。JREは、太陽光や陸上風力、バイオマスと再生エネ電源を多く持つほか、政府が本格導入を目指す洋上風力も事業化に向けた検討に取り組んでいる。

 JREは、平成24年の設立から10年に満たない新興企業だ。約2000億円の巨費に見合う買収なのかという見方も少なくないが、井上氏は「JREが持つ既存資産と将来価値を算定した」と説明し、買収金額はあくまでも「妥当な価格だ」と語った。

 ENEOSの再生エネの発電容量は、建設中を含めると国内外で51.4万キロワット。JREは70.8万キロワットで、今回の買収で一挙に約122万キロワットとなる。買収の相乗効果を通じて「日本を代表する業界トップクラスの再生エネ事業者となることを目指す」(井上氏)と意気軒高だ。

 他の元売り大手も、再生エネ事業の展開を加速している。

 出光は、太陽光を中心にバイオマスや風力、地熱と多様な再生エネ電源を持ち、建設中の案件は国内に加え北米や東南アジアにもある。再生エネの発電容量は今年3月末時点で50.2万キロワットで、令和12年度までに約8倍の400万キロワットに伸ばす目標を掲げている。一方、今月には子会社が手掛ける太陽光パネルの生産について、中国勢との競合激化を踏まえて来年6月末をめどに撤退することを決めるなど、選択と集中を進めている。

 コスモは、風力発電を新たな柱に育てる考えだ。陸上風力の発電容量は今年6月末時点で30.3万キロワットで、これを早期に50万キロワットまで引き上げる。洋上風力でも複数の案件を手掛けており、令和12年度までに陸上と洋上を合わせて150万キロワット超に拡大することを目指す。

 年初からの原油価格の上昇は在庫評価益を押し上げ、短期的には元売り大手の業績に追い風となる。だが、人口減少やエコカーの普及といった従来の逆風要因に急速な脱炭素の動きが追い打ちをかければ、石油製品の国内需要の減少ペースが速まりかねない。

 「(温室効果ガス排出量を実質ゼロにする)カーボンニュートラルへの方向性はもう変えられないと認識した上で、将来に向けて事業のかじをどう切っていくかは重要な課題」(ENEOSの井上氏)。再生エネ事業の拡大で「最適解」を探り出せるか、各社の経営手腕が問われる。(森田晶宏)

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