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» 2021年11月08日 08時02分 公開

本ナビ+1 俳優、寺田農 『相米慎二最低な日々』 「いい時代」だった日本映画界

世界を震撼させた米中枢同時テロが起きる2日前、2001年9月9日、映画監督・相米慎二は逝った。53歳だった。

[産経新聞]
産経新聞

『相米慎二最低な日々』相米慎二著(APEOPLE・2750円)

俳優、寺田農さん

 世界を震撼(しんかん)させた米中枢同時テロが起きる2日前、2001(平成13)年9月9日、映画監督・相米(そうまい)慎二は逝った。53歳だった。

 本書は1994年から翌年まで、「月刊カドカワ」に連載された相米自身によるエッセー10編と、同誌に掲載された「自作を語る。」「相米慎二に訊く、50の質問。」で構成されている。

 相米は80年の初監督作品「翔(と)んだカップル」から2001年の「風花」まで13本の作品を残した。エッセーでは、自らの胃の中にすみ着いたねこの話からはじまり、映画祭で訪れたミラノ、パリ、シチリア島のこと、自分が住んでいた東京・西荻窪の日常など、そのほとんどが酒がらみの生き方を「最低な日々」として、虚構と含羞、ほんの少しの本音でつづっている。

『相米慎二最低な日々』

 「自作を語る。」の対象は、「翔んだカップル」から94年の「夏の庭 The Friends」まで。相米は自作について言い訳めいたことを言うのを極端に嫌った。批評家や他人の言葉には、ただ一言、「すいません」。そんな相米に、たとえ、その多くが口から出まかせであっても、ここまでしゃべらせているのは聞き手の力量だろう。

 会いたい映画人にジャン=リュック・ゴダールを挙げ、「『なんでまだ映画やっているんですか?』って質問したい。あの人なら他にやることがあるんじゃないかって思うんだけど」。

 日本映画界への思いを問われ、「俺はいい時代だと思って頑張ってる」「映画を観(み)たいという人たちがたくさんいればいい映画ができる」「皆さん、観たいという記憶が薄れる前に、映画館に行きましょう」と話している。

 相米没後20年。日本映画はますます不自由になり、つまらなくなった。

『相米慎二という未来』金原由佳、小林淳一編(東京ニュース通信社・2970円)

『相米慎二という未来』

 本書のテーマは「相米慎二を過去にしない」。相米と会ったことも仕事をしたこともない若者たちとの「邂逅(かいこう)」、相米映画の出演者たちの「回想」、関係者の「証言」で構成。そこから相米映画の魂と、日本映画の「未来」へのヒントが見えてくるのではないか……。

 相米の「台風クラブ」の私物台本の書き込みには「自分で考えろ」とあった。


てらだ・みのり 昭和17年、東京都生まれ。映画、ドラマなど多数出演。元東海大学文芸創作学科教授。現在、板橋区立美術館運営協議会会長。

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