ニュース
» 2021年11月11日 08時28分 公開

川崎重工 水素発電のリード役担う覚悟実現へ、世界初の専用ガスタービン開発 西村元彦執行役員インタビュー(1/2 ページ)

神戸港に浮かぶ人工島「ポートアイランド」で、脱炭素社会の先駆けとなる取り組みが行われている。

[産経新聞]
産経新聞

 神戸港に浮かぶ人工島「ポートアイランド」で、脱炭素社会の先駆けとなる取り組みが行われている。燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しない水素を燃料に使ったガスタービン発電の実証事業だ。

川崎重工業の水素ガスタービンの発電設備。世界で初めて水素だけで周辺施設に電気と熱を供給した=神戸市中央区(黄金崎元撮影)

 ガスタービンを開発したのは川崎重工業。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として、平成27年から大林組などと技術開発を進めている。30年には水素だけで世界で初めて周辺の公共施設に電気と熱を供給した。

 川重が開発したガスタービンは1000キロワット級で、工場や地域の電力供給に適したタイプだ。従来の天然ガス用を部分的に改良。コストを抑えるため、水素と天然ガスの混焼にも対応できるようにした。

 開発に当たり、最大の課題になったのは大気汚染の原因にもなる窒素酸化物(NO)の抑制だった。NOは高温で燃焼する際に空気中の窒素と酸素が結びつき発生する。ガスタービンは燃焼器で燃料を燃やして発生する高温高圧のガスでタービンを回転させて発電するが、水素を燃料にすると天然ガスよりも高温になるため、NOxの発生量が増えてしまうのだ。

 当初、川重は高温部分に水をスプレー状で噴射してNOを抑えようとしたが、この方式では燃費が悪化する。このため、水を使わずに済むようバーナーの形状を改良。水素を燃焼室に送り込む装置の先端部にシャープペンシルの芯ほどの穴を数百カ所設け、そこから小分けにして噴射する方式を採用した。

神戸空港島にある液化水素荷役基地。オーストラリアから専用船で運んだ液化水素をタンクに貯蔵する=神戸市中央区(黄金崎元撮影)

 水素の噴射量を抑えることで火炎が小さくなり、空気が高温部分を通る時間を短縮、NOの発生を抑えるようにしたのだ。昨年5月に水を使わずにNOxの発生を抑えた水素ガスタービンの運転に成功。今後は天然ガスとの混焼にも対応できるように開発を進めている。

 水素ガスタービンは飛行機のエンジンにも応用できるなど、さまざまな可能性を秘めている。水素戦略本部ソリューション部の足利貢副部長は「海外にも展開し、世界の脱炭素化に貢献したい」と力を込める。

 水素社会の実現には水素価格の引き下げが不可欠だ。現在の水素価格は1立方メートル(0度・1気圧の標準状態)当たり100円だが、政府は令和12年に30円、さらに32年には20円とする目標を掲げている。

 価格の引き下げには供給量の拡大も鍵を握る。川重は海外から水素を安く大量に調達するため、サプライチェーン(供給網)の構築にも着手。岩谷産業、ENEOSなどとオーストラリアの褐炭から液化水素を製造し、神戸空港島に設けた液化水素の荷役基地まで専用船で運搬、貯蔵する実証実験を進めている。12年頃の商用化を目指している。

 川重は水素事業の売上高を12年度に3000億円、22年度に5000億円に引き上げる計画だ。橋本康彦社長は「水素はさまざまな分野で利用拡大が見込まれる。保有技術を生かし、裾野の広い取り組みを行っていく」とし、水素社会の実現を担う覚悟だ。

       1|2 次のページへ

copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆