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» 2022年01月05日 08時07分 公開

「起業後進国」払拭 脱炭素関連、独自技術で存在感

事業活動を通じて社会課題の解決を目指す「社会貢献型ベンチャー企業が存在感を増している。社会課題に挑むことにやりがいを見いだす起業家が出てきたことに加え、その熱意に共感する支援企業が増えたことなどが大きい。

[産経新聞]
産経新聞

 事業活動を通じて社会課題の解決を目指す「社会貢献型ベンチャー企業(ソーシャルベンチャー)」が存在感を増している。社会課題に挑むことにやりがいを見いだす起業家が出てきたことに加え、その熱意に共感する支援企業が増えたことなどが大きい。特に注目されるのは、世界中で取り組みが活発化している脱炭素化の関連。素材や蓄電池などさまざまな分野で独自技術を持つ有望ベンチャーが台頭している。

「ライメックス」と石灰石を手に持つTBMの山崎敦義社長=東京都千代田区(井田通人撮影)

「サステナブル革命のトップに」

 「日本の技術や価値観、仕組みを活用し、サステナブル(持続可能性)革命のトッププレーヤーになる」。素材開発を手掛けるTBM(東京都千代田区)の山崎敦義社長は、脱炭素化への貢献に意欲を燃やす。

 同社は石灰石を主原料とし、プラスチックや紙を代替できる新素材「ライメックス」を平成28年から生産している。買い物袋や名刺、クリアファイルに使われており、家電量販大手ヨドバシカメラ(東京都新宿区)などの有名企業も採用。建築資材や自動車用部材への採用も狙っている。

主成分の石灰石に植物由来樹脂を混ぜて作ったTBMの「バイオライメックスバッグ」。ビニール袋の代わりとなる(同社提供)

 石灰石は、焼却時の二酸化炭素(CO2)排出量がプラスチックに比べ格段に少ない。しかも世界中で採れ、枯渇の恐れがほとんどない。国内でも採取可能なことから、資源の大半を輸入に頼る日本にとってうってつけの素材といえる。

 資源の循環を促進するため、令和2年7月には、第2の柱として再生素材の新ブランド「サーキュレックス」を立ち上げた。神奈川県横須賀市では、ライメックス製品や廃プラを回収・選別し、素材として再生する工場の建設を進める。

共同研究、多方面から引っ張りだこ

 「風向きは以前と全く違う」。脱炭素化やサステナビリティー(持続可能性)への関心の高まりを実感しているのは、バイオ素材開発、スパイバー(山形県鶴岡市)の関山和秀代表だ。同社は、丈夫なクモの糸にヒントを得た人工タンパク質「ブリュード・プロテイン」を開発・販売する。

糸状にした人工タンパク質「ブリュード・プロテイン」を持つスパイバーの関山和秀代表(同社提供)

 ブリュード・プロテインは、サトウキビなどから得られる糖類を微生物に与え、発酵させてつくる。化学繊維と違い石油由来ではない上、天然繊維のカシミヤやウールのように、メタンガスを含んだ反芻(はんすう)動物の「げっぷ」による温暖化とも無縁だ。現在の主な用途は衣料品で、人気ブランド「ザ・ノース・フェイス」のアウトドアジャケットに採用されたこともある。また、「自動車部品や化粧品、人工毛髪などへの採用も目指している」(関山代表)という。

 関山代表が慶応大でクモの糸の研究を始めたのは平成16年で、正式に会社を立ち上げたのはその3年後のことだ。当時は他社の元へ共同研究の提案に赴いても「一蹴された」というが、今や多方面から引っ張りだことなっている。

韓国大手財閥と資本業務提携も

スパイバーのクモ糸繊維

 TBMの山崎社長は、ライメックスの事業化にあたり「紙の神様」と呼ばれる日本製紙元専務の角祐一郎氏に教えを請い、会長に就任してもらった。スパイバーは、研究論文から繊維メーカーなどの元技術者を探し出し、「イロハから教えていただいた」(関山代表)という。設立の経緯やこれまでの歩みは異なるが、日本の「先達(せんだつ)」に習いながら台頭してきた点は共通している。

 「起業後進国」といわれ、有望なベンチャーの輩出が少ないといわれてきた日本だが、社会貢献型ベンチャーに対する海外投資家の関心は日増しに高まっている。TBMは昨年7月、韓国の大手財閥SKグループと135億円の資本業務提携で合意。今後はSKがTBMの海外販売を支援する。スパイバーも、同年9月に米投資会社のカーライル・グループなどから約344億円を調達した。近くタイ工場を本格稼働させるほか、米国でも穀物大手と組んで生産に乗り出す。

 「(他の人にも)もっとチャレンジしてほしいし、チャレンジを促すためにも自分たちの事業を成功させたい」。TBMの山崎社長はこう語り、後に続く存在を熱望する。(井田通人)

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