環境規制の話になると、ガソリン車やディーゼル車から電気自動車(EV)への移行がよく伝えられる。ところが、欧州では自動車だけにとどまらず、域内を運航する船舶についても話題に上る。主にディーゼルエンジンを使用しているためだ。2021年7月に欧州連合(EU)欧州委員会が公表した温暖化ガスの大幅削減に向けた包括案の中には、自動車のみならず、船舶に関する規制も盛り込まれた。
船舶に関する法案では、温室効果ガスを20年比で50年までに75%削減すること、および30年までに欧州の主要な海港(海に面した港)や内陸港(河川港)に対して、陸上充電設備を設置するよう要請している。停泊中にディーゼルエンジンを動かすと海洋汚染、大気汚染の原因になることから、停泊中はエンジンを止め、陸上充電設備からの電気を活用しようというものである。
しかし、それだけにはとどまらず、温室効果ガスを大幅に削減しようと、島と島を結ぶフェリーやクルーズ船などを完全電動船(E−Ship)に置き換える動きも出ている。さらには、ヨットハーバーなどが運用するモーターボートも、ディーゼルエンジンから電動ボート(E−Boat)への転換が進んでいる。
呼応するように陸上充電設備は、大型のものだけではなく、EVなどで使用される小型の急速充電タイプを港湾用に変更して活用している。
船舶の電動化は、環境規制で定められた欧州が先行しているが、規制は北米、アジア、オセアニアなどに広がっていくことが予想される。日本では、船舶はまだまだと思っていても、欧州を中心に既に電動化や陸上充電設備の拡充の動きが出ている。国内の船舶、充電設備関係者は今から備えることが必要ではないだろうか。
(日本電動化研究所代表取締役 和田憲一郎)
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