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» 2022年05月16日 08時53分 公開

新幹線・駅……苦境の鉄道がリモートワークで反転攻勢

新型コロナウイルスの感染拡大の勢いは落ち着いているが、JRなど鉄道各社は駅や鉄道利用者のリモートワークをサポートするサービスを広げている。

[産経新聞]
産経新聞

 新型コロナウイルス禍で苦境の続くJRや私鉄の鉄道各社が新たな需要を掘り起こそうと、鉄道利用者らのリモートワークを支援するサービスを広げている。コロナ禍で注目されるようになった駅構内のシェアオフィスの利用は堅調といい、リモートワーク環境を整備した新幹線も運行中だ。各社は感染収束後も一定の需要が見込めるとしているが、浸透には利用しやすさの向上がカギとなる。

JR東海が駅構内で設置を進めている個室スペース(左)と半個室の無料スペース=新大阪駅(大阪市淀川区)

20分275円

 JRや私鉄の各社は昨年以降、個室型を中心としたシェアオフィスを続々と設置している。JR東海は昨年12月、東海道新幹線の東京駅や新大阪駅など主要駅で、公衆電話のような外観の個室スペースの運用を開始。電源とインターネットに接続するWi―Fi(ワイファイ)を備え、新幹線の予約サービスに登録する会員が20分275円で利用できる。

 同社によると、コロナ禍の前は東海道新幹線の利用者の6割がビジネス客だったことを踏まえ、駅でのリモートワーク環境の整備を推進。担当者は「個室で周囲を気にせずに資料作成やウェブ会議に集中できると好評だ。会員登録数は順調に伸びている」と話す。

 駅待合室では、いすを備えた半個室の無料スペースの設置も進めていて、夏ごろまでに東海道新幹線「のぞみ」の全停車駅への設置を完了するという。

東海道新幹線が導入している座席で通話やウェブ会議ができるビジネス車両「S Work車両」

 車両にリモートワーク環境を整備する動きも目立つ。東海道新幹線では昨年10月、座席で通話やウェブ会議ができるビジネス車両「S Work車両」を導入し、今月9日から最新車両「N700S」内で短時間の打ち合わせやウェブ会議ができるビジネスブースの試験運用を開始した。

 近畿日本鉄道は昨年11月、ワイファイを備えた団体専用列車「楽(らく)」で大阪上本町駅(大阪市)から賢島駅(三重県志摩市)までリモートワークをしながら移動し、現地のホテルに宿泊する体験プランを販売。旅先で休暇をとりつつ仕事もする「ワーケーション」を提案する狙いがあったといい、「ウィズコロナを見据えた新たな働き方の創出を目指す」(同社)という。

「需要は続く」

 各社は当面、生活様式の変化によりリモートワーク需要が続くとみる。

 傘下に阪急電鉄と阪神電気鉄道を持つ阪急阪神ホールディングスの大塚順一・専務取締役は今月13日の決算記者会見で「駅関連施設のリモートワーク用設備の需要はコロナ後もある。そこにパソコンを持ち込んで仕事をする動きはライフワーク・バランスを考えても進む」と見通しを語った。

 ただ、課題を指摘する声もある。

 帝国データバンク大阪支社の昌木裕司情報部長は「在宅勤務や仕事現場に直行直帰の方が効率的という業種もあり、リモートワークはコロナが完全に収束しても残るだろう」と予想。一方で、「支援サービスにも一定の需要があるはずだが、現状では利用に事前登録が必要など制限があるものが多い。定着・拡大するにはさらに気軽に利用できるサービスにする必要がある」と話している。(井上浩平)

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