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» 2022年05月24日 08時17分 公開

大阪メトロ、次世代移動「MaaS」前進 バス→車いす→病院など アプリで一括予約目指す

鉄道やバスなどあらゆる交通手段を連携させる次世代移動サービス「MaaS」の導入に向けた取り組みが進んでいる。

[産経新聞]
産経新聞

 鉄道やバスなどあらゆる交通手段を連携させる次世代移動サービス「MaaS(マース)」の導入に向けた取り組みが進んでいる。出発地から目的地への移動をITで最適化して提供するもので、既存の交通インフラを変革するものとして注目されている。大阪メトロは利用者の予約に応じて運行する「オンデマンドバス」の社会実験を行っており、交通機関の空白を埋め、スムーズな移動を実現する仕組みとして期待が寄せられる。バスと同時に飲食店や医療機関の予約を一括でできるサービスも検討中で、移動だけでなく生活の利便性向上を目指す。

平野区のエリアを運行するオンデマンドバス(大阪メトロ提供)

AIが運行ルート割り出し

 令和3年3月、大阪メトロはスマートフォンアプリ「Osaka MaaS社会実験版」の提供を始め、オンデマンドバスの運行を開始した。アプリでオンデマンドバスの予約をタップし乗降場所と出発日時を選択すると、混雑状況に応じて予約可能な時間帯が表示される。支払い方法はオンライン決済と現地での現金払いが選べるほか、月額5000円から定期券も販売している。電話での予約や車いすのまま乗車可能なバスの配車もできる。

 運行エリアは大阪市生野区、平野区北部・南部の3エリアで始め、4年3月から北区、福島区が追加された。運行時間は午前6時〜午後11時、乗降場所はエリア内で約300メートルごとに設定され、複数の利用者が乗車する場合は人工知能(AI)が自動で最適なルートを割り出して運行する。到着の遅延は最大で10分程度に抑えられるという。

利用者3倍以上に

 大阪メトロによると、利用者は増加傾向で推移しており、開始当初は月間約2000人だったが、4年1月には約6900人と3倍以上になった。通院やレジャー、外食など、移動の理由は多岐にわたる。

 次世代モビリティ企画課長の柿本恭志氏は「人々の移動をより便利にするタクシーと路線バスの中間のような存在。マースで誰もが気軽に外出できる社会を目指したい」と意気込む。

 3年12月には天王寺駅で鉄道事業者として初めて電動車いすのシェアサービスの実証実験を実施。既存の鉄道や路線バス、オンデマンドバスと連携して、一括で予約や決済ができるシステムの構築を目指す。

鉄道会社間の連携課題

 さらに市民の外出機会をつくる取り組みとしてオンデマンドバスと同時に飲食店や病院の予約が取れる仕組みを検討する。大阪メトロは大阪・関西万博が開かれる7年度までにオンデマンドバスを利用できる「乗継ハブ」を大阪市内中心に10カ所以上整備する方針を示しており、併設される商業施設との連携も想定する。「交通だけでなく、連携先のサービスも含めたサブスクリプション(定額課金)も提供できれば」(柿本氏)としている。

 課題となるのが鉄道会社間の連携で、乱立するアプリやサービスをいかに統合するかが重要となる。JR西日本や近畿日本鉄道などはこれまで、経路検索やネット予約をまとめてできる独自のアプリ開発に力を入れてきており、それぞれが多くのユーザーを抱える。3年12月から鉄道会社などによる「関西MaaS推進連絡会議」が開かれており、4年度内に各社を横断して利用できるマースアプリの提供を予定している。(桑島浩任)


 新型コロナウイルス感染拡大による利用者減から立ち直りつつある鉄道業界。利便性向上が再び注目される中、関西でのサービス・保守強化の動きなどを取り上げる。


大阪メトロのオンデマンドバスについて語る掘元治常務=大阪市

 次世代移動サービス「MaaS(マース)」導入に向け積極的に取り組む大阪メトロ。今後の公共交通のあり方などについて堀元治常務に聞いた。

――MaaS導入へ向け、どのように取り組みを進めていくか

 「実際の移動をいかに便利にするか、生活サービスと交通をどう一体化していくかが重要だ。そのために既存の鉄道やバスも含めた交通ネットワークの強化や、顧客ニーズに合わせた交通を提供するための改革も進めている」

――まずは2025年大阪・関西万博でのスムーズな移動を目指す

「鉄道や路線バスでは、事業者側のルールで移動してもらっていた。これに対し、顧客側のルールで運行できないかと始めたのがオンデマンドバスだ。便利だという声がある一方で、高齢者から『専用アプリの使い方が分からない』という声もあるので、地道に説明して利用者を増やしたい」

――万博へ向けた各社のアプリ統一の進捗(しんちょく)は

「一つのレガシー(遺産)を作っていこうという点では合意形成はできている。細かな制度などの意見をまとめるには一定の時間がかかる」

――大阪メトロが目指す公共交通の未来は

「利用者数に応じて運行本数を調整するような仕組みを自動運転と連携して導入し、将来的に自由度が高くなっていくと思う。連携がうまくいくかなどの問題はあるが、やる価値はあるだろう」


ほり・もとはる 立命館大院土木工学修士修了。平成5年、大阪市採用。30年大阪メトロ鉄道事業本部工務部長。執行役員、取締役などを経て、令和3年4月から常務(交通事業本部長)。55歳。大阪府出身

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