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» 2022年06月01日 09時00分 公開

宇宙と地上、レーザー光で通信 筑波大発ベンチャーが世界初の商用化へ

防災や軍事・安全保障などさまざまな分野で活用が期待されており、将来は月と地球を結ぶ光通信の実用化も目指している。

[産経新聞]
産経新聞

 筑波大学発の宇宙ベンチャー企業、ワープスペース(茨城県つくば市)は31日、レーザーを用いた宇宙における光通信ネットワークサービスを、早ければ令和6年冬に始めると発表した。実現すれば、民間企業で世界初の商用化となる。防災や軍事・安全保障などさまざまな分野で活用が期待されており、将来は月と地球を結ぶ光通信の実用化も目指している。

ワープスペースの光中継衛星「LEIHO(霊峰)」のイメージ(同社提供)

速度は「電波の十数倍」

 新サービス「ワープハブ・インターサット」は、光通信が可能な衛星を3基を地上から8千〜2万キロの中軌道に打ち上げ、400〜1千キロ上空の低軌道を周回する人工衛星間の通信を中継を経て、地上に電送する。ワープスペースの衛星と地上局はそれぞれ受光器と発光器を付け、近赤外線のレーザー光で互いの位置を探索し、合致すればデータをやり取りする仕組みだ。

 従来の電波を使った衛星画像電送では、使用する電波の周波数に制約があり、地上で送受信できる設備場所も限られるなど課題があった。光通信サービスが実用化されれば運用の自由度が高まり、衛星からの静止画や動画がほぼリアルタイムで得られるようになるという。

小型光衛星群の運用イメージ(ワープスペース提供)

 初号機となる衛星「LEIHO(霊峰)」は1辺1メートルの立方体で、重さは200キログラム超を想定。令和6年10月の打ち上げを目指し、準備を進める。早ければ同年冬に無料の試験サービスを始める。7年中にサービスを有料化し、8年に3基体制を確立させる。複数の光通信衛星を一体的に運用することで、衛星と地上との間での常時高速通信が可能になる。

 伝送速度は、試験サービス開始当初は1Gbpsだが、最終的には10Gbpsまで引き上げる。同社によると、気象条件などにもよるが、電波を使った電送よりも「数倍から十数倍は速い」という。

 並行して地上局の設置も進め、国内外で20カ所程度を計画。現在、立地選定作業を進めており、早ければ今年9月にも最初の地上局を日本国内に設置する。

安全保障分野でも引き合い

 特に注目されるのが、防災と安全保障分野での活用だ。防災面では、災害発生直後に衛星画像を素早く入手することで、復旧・復興のスピードをあげることが期待される。

 一方、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐっては、ウクライナ軍が戦況分析に、米宇宙ベンチャーによる衛星画像を利用し、成果を上げているとされる。ワープスペースによると、「防災や安全保障を理由にした問い合わせや引き合いが入っている」という。

 また、衛星によるデータは土地利用や交通量、農作物の成長状況などの把握に役立つほか、石油タンクの蓋の位置から備蓄量を推計する手がかりにもなるという。

 さらにワープスペースは、地球と月との間の光通信サービスも目指している。今年1月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)から、月と地球との間を結ぶ光通信システムの実用化に向けた検討業務を受託した。月をめぐる探査や開発の競争が世界的に激しさを増しており、同社は令和12年にもサービスを開始したい考えだ。

会見後、衛星の模型を手に記念撮影に応じるワープスペースの常間地悟最高経営責任者(CEO、右)=31日、茨城県つくば市(松村信仁撮影)

 ワープスペースが31日に開いた記者会見で、常間地悟最高経営責任者(CEO)は、「このつくばの地から地球と月、さらに火星と、将来の人類の宇宙での活動領域の拡大に歩調を合わせながら通信事業を拡大させたい」と語った。

 ワープスペースは平成28年、筑波大による宇宙分野の研究開発プロジェクトで培った通信衛星開発技術を基に設立。令和3年に技術実証衛星を打ち上げ、国際宇宙ステーション(ISS)からの軌道投入に成功した。(松村信仁)

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