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» 2022年06月03日 08時25分 公開

都市に眠る木質廃棄物で電力の地産地消 大阪・大東市のバイオマス発電事業者

大阪府大東市の生駒山中で「木質バイオマス発電」を手掛ける新電力会社の取り組みが注目されている。

[産経新聞]
産経新聞

 大阪府大東市の生駒山中で「木質バイオマス発電」を手掛ける新電力会社が注目されている。都市部で安定的に発生する木質廃棄物を燃料チップにリサイクルして発電所でクリーンな電気に変え、地域に供給する「TJグループホールディングス」だ。「電力の地産地消」を実現した先進モデルとして昨年度の新エネ大賞の経済産業大臣賞を受賞し、近く第2発電所を建設する計画もある。二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにする「カーボンゼロ」も夢ではない、思いがけない資源が近畿圏には眠っていた。

燃料チップを手に取る東野隼士社長=大阪府大東市

3社でつなぐ

 奈良から大阪方面に下る阪奈道路を左折し林を抜けると、大きなプラントが視界に飛び込んできた。施設前には丸太が幾重にも積み上げられている。府内初の木質バイオマス発電所としてTJグループが平成25年12月に稼働させた「龍間(たつま)発電所」だ。

 東野隼士(とうのはやと)社長(43)は「SDGs(持続可能な開発目標)の大きな流れもあり、環境負荷の低減や資源循環に取り組む企業からの関心はこの2年ほどで加速度的に高まっています」と話す。

 TJグループは傘下3社で事業をつないでいる。「都市樹木再生センター」は都市で発生する建築廃材や公園などの剪定(せんてい)木、山間部の未利用材などを細かく砕いて燃料チップに資源化。「BPS大東」は龍間発電所でチップを燃焼させて発電。「グリーンパワー大東」は地元自治体や企業などと契約を結んで電力供給している。

 社員は約50人。発電事業に参入して8年、電力供給を手掛けて5年で年商30億円超のグループに成長した。

大震災で決意

 東野社長は「会長に先見の明があった」という。

 東野社長の父で造園業を営んでいた喜次(よしつぐ)会長(72)は周囲の反対を押し切り、平成14年に生駒山上に都市樹木再生センターを社員5人で創業した。野焼きや不法投棄が社会問題化する中、木くずをリサイクルする先例のない事業で、土壌改良材やボイラー用のチップ燃料を商品化して販路を広げた。

 32歳で経営を引き継いだ東野社長は、木質バイオマス発電を理想として思い描いていた。23年3月に東日本大震災が発生。個人的な縁で翌年の夏に訪れた宮城県亘理町(わたりちょう)で震災の被害を目の当たりにし「悩んでいる場合ではない」と発電所建設を決意したという。

木質資源のリサイクルを確立するため、林業や産廃処理業にも参入。許認可取得に向けて「電力の地産地消」の必要性を訴えた。震災を機に政府がスタートさせた再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)も追い風となった。

 木質バイオマス発電は太陽光や風力、水力、地熱などと並ぶグリーン発電の一つ。木は成長段階でCO2を吸収しているため、燃焼させても排出量にカウントされない。

 ただ、木くずには数えきれないほどの種類があり水分量にもばらつきがある。チップとして24時間安定燃焼させるのは容易ではない。発電事業に踏み切れたのは都市樹木再生センターの積み重ねがあったからだ。

 龍間発電所は年間6万トンのチップを使用し、発電出力は約5750キロワット。発電量は一般家庭約1万世帯の年間使用量に相当する。

近畿では関西電力の朝来バイオマス発電所(兵庫県)がほぼ同規模だ。朝来は間伐材を燃料にする「山林型」だが、龍間は主に都市部の木質廃棄物を燃料とする「都市型」。京阪奈のほぼ中心という立地がそれを可能にしている。

資源が「埋蔵」

 「うちの強みは電力の由来が明確なこと」。東野社長はこう強調する。最近は、資源循環とCO2排出削減を目指す大手建設会社の竹中工務店や長谷工コーポレーションと工事現場ごとに契約を締結。建設現場で出る木質廃棄物をリサイクルして現場にグリーン電力を供給するケースが増えており、この2社だけでこれまでに約40カ所に及んでいる。

 近畿2府4県で発生する木質の産業廃棄物は年間80万〜90万トンとされる。龍間発電所で使用している燃料チップはその10分の1以下。公園や街路樹から生じる一般廃棄物を合わせると、近畿圏にはまだまだ相当量の資源が?埋蔵?されている。都市の廃棄物を資源化する木質バイオマス発電には大きな伸びしろがある。

 TJグループが計画中の第2発電所は龍間発電所の倍近い電力供給を目指す。東野社長は「木質バイオマス発電なら今ある資源で電力の地産地消ができる。近い将来に再生可能エネルギーの半分程度を担えるようリードし、持続可能なまちづくりをお手伝いしたい」と話している。

CO2削減目標、10年早く達成

 大東市は4年前から、市本庁舎などの主な公共施設と小中学校20校でグリーンパワー大東のバイオマス電力を使用している。

 市の計画では2030年度のCO2の削減目標を13年度比40%減としていたが、20年度に49%減に到達した。市担当者は「電気の使用量は全く変わらないのにバイオマス発電で10年早く目標に到達した。地産地消という意味でも地元に事業者があり幸運だった」と話す。

 大阪府と市も共同でクリーンな電力の導入を進める。30年度までに再生エネルギーの利用率を現在の20%から30%以上に、導入量も190万キロワットから250万キロワット以上に引き上げる計画だ。(守田順一)

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