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» 2022年06月17日 08時03分 公開

AIで異音を「見える化」 製造現場の監視などに成果 札幌のIT企業が開発

札幌市のIT企業が開発した音をリアルタイム監視するシステムが注目されている。

[産経新聞]
産経新聞

 札幌市のIT企業が開発した音をリアルタイム監視するシステムが注目されている。AI(人工知能)に工場設備の平常音などを事前に学習させ、「聞いたことがない音」を異音として検知させるほか、グラフデータで「見える化」もする。すでにコンクリート製造工場などで導入されており、設備の予知保全や異常の早期発見などに成果を上げている。

自社開発した音監視システムを説明するバーナードソフトの瓜生淳史代表。正常時は緑色で、異音が短時間続くと黄色に変化し、その状態が長時間続いた場合は赤く表示される=6日、札幌市中央区(坂本隆浩撮影)

普段の音を学習

 全国でも珍しいリアルタイム音監視システム「S―Kaleid(エスカレイド)」を開発したのは、札幌市のIT企業「バーナードソフト」(瓜生淳史代表)だ。インターネット回線を用いた「IP電話」の上場ベンチャー企業の技術者15人で平成26年に独立。音声通話など音技術のノウハウを生かして28年から音監視システムの開発を始め、約2年で製品化したという。

 瓜生さんは「当時、映像監視の技術はすでに産業分野で活用されていたが、音監視は研究論文も見つからなかった」という。ほぼ新たな領域の開発に向けて開発チームが考えたのは機械などの異常音をAIに学習させる方法。ただ、実際に調べ始めると、異音を探すのは至難の業で「時間がかかる」と断念。発想を切り替え、工場などの現場に普段流れている音をAIに覚えさせ、音に変化が起きたときに「聞いたことがない音」=「異音」として検知するシステムに見直した。

バーナードソフトが開発したリアルタイム音監視システム「S−Kaleid」の集音装置=6日、札幌市中央区(坂本隆浩撮影)

音のデータをグラフ化

 このシステムでは、異常を検知したい設備などの周辺に集音装置を置き、ネットワークを介してデータを集める。集音装置は小型端末とマイクがセットで最大15台まで設置可能。集まった音データはモニターをはじめ、スマートフォンやタブレット端末でもグラフ化された状態で確認できる。

 グラフは正常時に緑色で表示されるが、一定の許容範囲を超えると黄色へと変わり、その状態が長く続くと赤色になる。音量が大きい騒音のような環境や人間には聞き取れない周波数も検知する。いわば、異音を「見える化」した状態で監視できる仕組みだ。

 作業者の会話など問題のない音が紛れ込んだ場合は「ホワイトリスト情報」、逆に異常と判断される音は「ブラックリスト情報」としてそれぞれAIに覚えさせる。こうしたデータを積み重ねて検知精度を向上させることができる。

 すでに導入されている映像監視と比べると、導入コストが5分の1程度になるケースがあるほか、死角がある映像監視に対して音監視は全方位に対応する。「保守点検の省力化や点検作業の均一化、映像監視では難しい予防予知などでメリットがある」と強調する。

改良を継続

 導入の準備期間はおおむね3カ月が目安。事前に現場の音を蓄積する実証実験(テスト導入)の期間を経て本格導入を検討する仕組みだ。費用は小規模の場合で数十万円から、工場など大規模導入は数百万円から。導入済みの企業は約10社で、実証実験中の企業は10社以上。実際に異常の早期発見で修理コストを削減できたケースも報告されているという。

 注目を集める音監視システムについて瓜生さんは「ものづくりの現場以外で役立つ用途もあるのではないか」と期待する。今は屋内環境で使われることが多いが、雨や風など音の変化が多い屋外環境にも対応するよう「システムの改良を継続的に進めている」と話している。(坂本隆浩)

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