キリンビールの人気缶酎ハイ「氷結(ひょうけつ)」シリーズの売れ行きが好調だ。商品名を伏せた「ミステリー缶」を配布して消費者の関心を引き寄せて、のちに正体を明かすという奇策を採用。今年上半期(1〜6月)の販売数量は前年同期比2%増の約2063万となり、同期の過去最高を更新した。消費者に、先入観を持たずに味の向上などを評価してもらおうという戦略が奏功した格好だ。
氷結は平成13(2001)年に発売されたロングセラーだ。今年3月下旬以降、「シチリア産レモン」「グレープフルーツ」「シャルドネスパークリング」を順次リニューアル。果実のみずみずしくクリアな味わいを引き立てるとともに、雑味のないスッキリとした後口を実現した。
ロングセラーは多くの顧客から支持を獲得する一方で、「昔の味」のイメージが強く、味が向上しても消費者が手を伸ばしてくれないリスクがつきまとう。そこでキリンが考え出した奇策が、ミステリー缶を使ったPR戦略だ。
「『完璧』を目指したチューハイを飲んでみないか。」「5.16解禁。」と記されたシンプルなデザインの缶を4月26日から、全国の商業施設などで100万人に配布。CMキャラクターを務める俳優、高橋一生さんを招いた5月16日の発表会で、正体は氷結だと明らかにした。
高橋さんは「びっくりするぐらいにおいしかった。これまでの酎ハイとは概念が違った」と絶賛。「正体が氷結と聞いて、さらに驚いた。でも、氷結だからこそ、たどり着いた境地なのかもしれないと思った」と評した。
この戦略は販売面で奏功し、シチリア産レモンの購入率は、リニューアル前と比べて約1.8倍に増えたという。
新型コロナウイルス禍で「家飲み」需要が高まり、栓を開けてそのまま飲める低アルコール飲料「RTD」の市場は拡大傾向にある。すっきりとして、爽快な味わいなどが人気で、ビール類から移る消費者も増えている。
氷結では、甘くなくレモンの果実味が引き立つ「無糖レモン」を令和2年10月に発売。累計販売4億5千万本(250ミリリットル換算)を突破する人気ぶりだ。キリンは味の向上と商品ラインアップの拡充で、氷結ファンの顧客獲得を図る。(宇野貴文)
copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上