心身を回復、修復させるパフォーマンスの源「睡眠」への関心がブーム化している。象徴的なのが、異次元の活躍を見せるメジャーリーガー、大谷翔平選手の睡眠時間の長さだ。10時間以上と報じられ、盟友ラーズ・ヌートバー選手の食事の誘いを「寝てる」を理由に断るほどの徹底ぶりだ。逆に、強固な意思がなければ快眠を得難いのが現代社会である。交流サイト(SNS)や動画にゲーム、スマホ依存による睡眠不足も深刻化。そんな話題にからめて睡眠改善の法則を専門家に聞いた。睡眠の質を解析するスマートウオッチの進化も目覚ましい。
ビジネスマンやスポーツ選手ら約8万人の睡眠改善指導を行っている、日本睡眠学会会員で「スリープコーチ」の角谷(すみや)リョウさん(52)のもとを訪ねた。
大谷選手は寝すぎではないのか? との質問に、「1日の半分を睡眠に充てる一流選手は珍しくない」と角谷さん。
「7〜8時間のリカバリー睡眠に数時間の浅い眠りをプラスすることで神経細胞が活性化する。競技を極める意思を持つ選手が、能力を最大限に発揮するために必要な時間です」
スポーツチームの子供たちが早寝を心がけるようになるなど、大谷効果は計り知れないという。ただ、一般の大人が目的もなく長時間の惰眠をむさぼる状態は「社会生活に支障をきたし、無気力やうつにもつながる。薦められない」。
角谷さんは、神戸市職員時代に体づくりに目覚めて37歳で退職、パーソナルトレーナーとして独立した。
運動や食事を含めた総合的な指導を行う中、コンディショニングに最も重要な要素が「睡眠」だと気付き、スリープコーチとして専門性を磨いてきた。
新刊の著書「働く50代の快眠法則」(21日発売、フォレスト出版)は、不眠や中途覚醒などが顕著になる世代にスポットを当てている。「ありがちな間違いだが、睡眠不足で運動すればコンディションはますます落ちる。まず睡眠を優先してほしい。疾病リスクの低減、メンタルダウンも防げます。また、睡眠不調は判断力や社交性を鈍らせ、人が離れていく原因になる」
60代以上も働き続けることが普通になった人生100年時代。50代の睡眠が後半生を左右するという。
何をやるべきか? 本では睡眠環境の最適化、快眠に導くストレッチやマインドフルネスなどを多角的に紹介。50代の筆者は「マットレス(敷布団)の厚みを10センチ以上にする」を実践してみた。段ボールを敷くだけでも違うらしいが、家に使っていない客人用のマットレスがあったので重ねてみると、確かにふかふかと寝心地が良くなる。
「寝具の良しあしは、若い頃はさほど睡眠に影響しないが、50歳を超すと如実に表れる」と角谷さん。お金をかけない工夫を豊富に示すなか、スマートウオッチに関しては進化が著しいとして、紙面を割いている。
血中酸素や呼吸数、心拍変動から睡眠の質を解析し数値化するスマートウオッチ。85カ国で展開するガーミンは、体力残量を示す独自機能のボディーバッテリーに加え一昨年、睡眠スコア機能を搭載した。総睡眠のうち「深い」「浅い」「レム」「覚醒」の各時間も表示され、100点満点中のスコアで評価。アドバイスが届き、自身の睡眠傾向や課題が把握できる。
取材のため1週間ほど借りてみると、8時間寝た日よりも5時間睡眠の日の方がスコアが良いなど、時間の長短ではわからない睡眠の奥深さを実感した。
第5世代光学式心拍計を搭載した6月発売「フェニックス7 プロ」の価格帯は12〜17万円で、最高機種は37日間のロングバッテリーだ。日本では東京・銀座の旗艦店ほか、横浜市や埼玉県、大阪府のアウトレットにも進出している。
筆者が若かったバブルの頃。仕事も遊びも深夜まで励んで眠らないことが活力の証との価値観があり、徹夜を自慢する男性も多かった。CMの呼びかけは「24時間戦えますか」。いや、戦うために、寝よう!(重松明子)
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