次世代医療として成長が期待される再生・細胞医療の産業化に向け、神奈川県などは大学や医療機関、民間企業といった約170団体が連携するネットワークを構築し、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の実用化を進めている。川崎市川崎区の殿町地区で、iPS細胞の採取や培養、臨床応用を一貫して行い、医療機器の開発に役立つロボット技術などの開発にも乗り出している。多摩川を挟んで対岸に位置する羽田空港なども活用し、最先端医療の集積地としてアピールする。(高木克聡)
中核を担うのは慶応大や県の外郭団体などでつくる社団法人「かながわ再生・細胞医療産業化ネットワーク(RINK)」。殿町地区に研究拠点を置く慶応大医学部と対岸の羽田地区に診療所を開設する藤田医科大(愛知県豊明市)が連携する。慶応大が採取したiPS細胞を使い、藤田医科大の診療所で治療を行うことを目標に掲げる。
慶応大は令和4年1月、iPS細胞から作った細胞を脊髄損傷の患者に移植する世界初の手術をしたことを発表している。この手術では対象は脊髄が損傷してから2〜4週間経過し、運動と感覚が完全にまひした「亜急性期」の患者だった。将来的には脊髄が損傷してさらに時間が経過した「慢性期脊髄損傷」の患者に対する治療法を確立させることを目指している。
今月7日には再生・細胞医療の産業化への機運を高めるために関係者が集まってイベントを開催。慶応大の中村雅也副医学部長は、マウスを使った実験では慢性期の脊髄損傷に対してもiPS細胞によって、神経の再生とまひの症状改善が見られた研究成果を強調した。黒岩祐治知事は「まったく動けない人が動けるようになる。信じられないことがもうすぐ起こる。それを世界にアピールしていく」と力を込めた。
殿町地区では、ロボットがモノの触感を感じながら力加減をする「リアルハプティクス」技術を使った医療機器の開発を県立産業技術総合研究所などが進めている。同技術を体験した黒岩知事は「(医療現場の)匠の技をロボットでもできないかと望まれている。医工連携が具体的に実感できるエピソードだ」と期待を寄せた。
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