ニュース
» 2023年07月03日 08時20分 公開

通常業務を2年免除も 企業内デジタル人材育成進む

企業の業務効率化を促すDXに欠かせないデジタル人材を、社員のリスキリングで育成しようとする動きが広まっている。

[産経新聞]
産経新聞

 企業の業務効率化を促すDX(デジタルトランスフォーメーション)に欠かせないデジタル人材を、社員のリスキリング(学び直し)で育成しようとする動きが広まっている。全社員対象のオンライン講座や、通常業務からいったん離れて専門知識を習得させる制度など、各社、取り組みを工夫する。一方で、技術を身につけた人材の流出を懸念する声もあり、育てた人材を生かせる社内環境の整備も必要になりそうだ。

コクヨの東京品川オフィスで社員を集めて開かれたデジタル人材育成制度のキックオフイベントの様子=6月28日、東京都港区

 文具大手のコクヨは6月28日、デジタル人材を社内で育成するプログラムのキックオフイベントを東京オフィスで開催した。オンライン講座で人工知能(AI)や情報技術、データ分析技術などが学べ、AI講座だけで400人を超える応募があった。今や事業提案にデジタル技術の知識は欠かせず、コクヨの宮澤典友・執行役員ビジネスサプライ事業本部長は「学ぶだけで終わりにせず、アイデアを形にしていく場にもしたい」と話す。

 ダイキン工業では新入社員から約100人を選んで、通常業務を2年間免除し、社内講座の「ダイキン情報技術大学」でAIなどの専門知識の習得に専念させている。デジタル人材を生かして事業の拡大、強化を目指すが、「就職市場で優秀な人材を獲得するのは容易ではない」といい、思い切った育成制度の導入に踏み切った。

ダイキン情報技術大学の授業風景(ダイキン工業提供)

 昨年、全社員(約1万6千人)を対象としたオンライン講座を始めたのは大和ハウス工業。約3時間かけて、業務のDXに関する基礎的な知識を学ぶ。さらに令和8年度中にはリーダー的な役割を果たせる人材を約300人育成する考えだ。住友ファーマも3年から全従業員を対象にした基礎的な研修を行う。また、データサイエンティストなどを目指してより深い学習をする人向けの講座も充実させる。ここで学んだ人材が、業務効率化のツール開発を行った実績も日米で150件以上ある。

 オンライン学習サービスを手がける「manebi」(マネビ、東京)が令和4年1月、国内500社を対象に調査したところ、リスキリングを「実施している」とした企業は52.6%にのぼり、内容については「データ分析」などデジタル分野が上位を占めた。田島智也最高経営責任者(CEO)は「大手のみならず中小企業でも社内でデジタル人材を育成していく企業が増えてきている。高度な人材の育成だけでなく、まずはITリテラシー研修を全社で取り入れる企業も多い」と指摘する。

 一方で、「技術を身につけたら人材が流出するのでは」という声も中小企業を中心に上がる。岩井コスモ証券の有沢正一投資調査部長は「人材の育成と流動化は日本の経済成長に欠かせない要素だが、人手不足に悩む中小企業にとって人材流出のリスクは深刻な問題。人材を生かせる社内環境づくりなどきめ細かい支援の構築が必要だ」と話している。(田村慶子、黒川信雄、桑島浩任)

copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆