トヨタ自動車は11日、水素を使う燃料電池について、セダンや小型・大型トラックなど搭載する車種に合わせて柔軟にサイズを可変できる次世代システムを2026(令和8)年をめどに実用化し、異なるサイズを同一の設備で混流生産する方針を明らかにした。乗用と商用向けに共通対応できるシステム構造と製造技術で量産規模を拡大し、課題とされる燃料電池の原価の大幅な引き下げを図り、普及を促進する。
同日、中嶋裕樹副社長と7月1日付で発足した水素事業の専任組織「水素ファクトリー」の責任者らが説明会を開き、次世代燃料電池システムは電池の性能に加え、通常品と半分のハーフサイズを「同一ラインで大量につくれる(独自の)製造技術がアドバンテージになる」と説明した。
次世代システムは、燃料電池車(FCV)の「MIRAI(ミライ)」などに導入している現行品に比べてコストを半減。航続距離を20%向上させ、途中で水素を充填(じゅうてん)せずに東京〜大阪間を走行できる性能を見込んでいる。また、電池内の「セル」と呼ばれる中核部品の数を柔軟に変えられる構造により、車両サイズが異なるさまざまな車に容易に導入できる見通しだ。
トヨタはカーボンニュートラル(脱炭素)に向けたFCVの普及促進のため、燃料電池システムの外販にも取り組んでいる。
重い荷物を長距離輸送する大型トラック物流には電気自動車(EV)よりもFCVが適しているとされ、トヨタの燃料電池システムは中国や欧米の商用車を中心に30年に年間10万台分の供給が見込まれるという。
今後、5月に提携合意した独商用車大手のダイムラートラックとの協力なども含めて供給規模を上積み。商用向けで安定した生産規模を確保し、コストを下げることで乗用車のFCVの価格競争力も向上させる戦略を描いており、混流生産の製造技術はこれを後押しすることができる。
一方、中嶋副社長は、開発中の水素エンジン車について「ある地域で市場投入する前提で進めている」とも話し、FCVのほか、エンジン車や燃料供給網の整備を含めて総合的に水素事業を強化してい考えを示した。(池田昇)
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