ソニーグループが9日、令和6年3月期の業績予想を上方修正した。売上高は初めて10兆円を超えた前期をさらに上回り過去最高を更新する。決して良好とはいえない環境の下でも着実に収益を伸ばし、中長期的な成長に向け“仕込み”にも余念がない。傘下に抱える6事業の中でも、ゲームなどの娯楽と半導体には特に牽引(けんいん)役としての役割が期待されている。
「中長期的な成長の機会に富んでいる」
ソニーグループの十時(ととき)裕樹社長は9日の記者会見で、半導体と娯楽に対する期待をそう強調した。
娯楽の中心と位置付けられているゲーム事業は、巣ごもり需要の縮小という逆風にもかかわらず6年3月期に前期比で増収増益を見込む。ゲーム機「プレイステーション(PS)5」は半導体不足が解消し、5年4〜6月期に前年同期比38%増の330万台を出荷。通期では前期比約3割増となる2500万台の販売目標を掲げており、達成すれば歴代PSで過去最高となる。
同社は昨年7月に米ゲーム大手のバンジーを5千億円で買収するなど、ここ数年で多くのM&A(企業の合併・買収)を実行してきた。今後はハードウエア依存からの脱却や収益源の多様化にも一段と力を入れる構えだ。
一方、半導体事業の6年3月期は営業減益を予想している。主力製品の「CMOS画像センサー」は、中国経済低迷などによるスマートフォン需要の減少で市況が悪化。早ければ9月にも始まるとみていた回復の時期は「年明けから来年度以降にずれ込む」(早川禎彦執行役員)とした。
ただ、同社は長崎工場(長崎県諫早市)の増強を進めているほか、熊本県合志市に新工場を建設することも視野に入れる。「利益を伴った成長という形にする」(十時氏)という次の目標の達成に向けた布石は着々と打ちつつある。
同社は娯楽や半導体に投資しやすくするため、2〜3年後に金融事業を分離・独立させる方針。スマホなどのエレクトロニクス事業も規模よりは収益性を重視している。娯楽と半導体が売上高に占める割合は今後さらに高まりそうだ。(井田通人)
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