全国の医療機関で手術支援ロボットの導入が進んでいる。中でも倉敷成人病センター(岡山県倉敷市)は6月、米国製の最新機種「ダビンチSP サージカルシステム」を使って体表面にキズを作らない手術(ロボット支援下経腟的内視鏡手術)を国内で初めて成功させ、注目を集めている。同センターは今年4月、西日本で初めて、全国で3番目にダビンチSPを導入。子供たちが手術室で操作を体験できる「キッズセミナー」を開くなど、ロボ支援手術を知ってもらう活動にも力を入れている。
セミナーには岡山県と鳥取県の小学3〜6年生46人と保護者が参加。体への負担が少ない「低侵襲手術」の説明を婦人科の澤田麻里医長から受けた後、ロボット先端手術センターを見学した。
低侵襲手術は開腹手術と異なり、体表面に数カ所の小さな穴をあけて行う内視鏡手術などのこと。開腹手術と比べ大きな傷が残らず、術後の痛みや心身への負担が軽く、入院期間なども短い。
この日のセミナーでは、手術着を着用した子供たちが手術室に入り、単孔式のダビンチSP、多孔式のダビンチXiの操作を順番に体験した。
手術室にはダビンチ本体と手術台、コンソール(遠隔操縦装置)、患部を映すビデオシステムが配備。子供たちはコンソールに顔をうずめてモニターをのぞいたり、コントローラーを操作したり。アームの先端の専用鉗子(かんし=手術用医療器具)を動かし、直径数ミリのビーズ玉を巧みにつかんで移していた。
さらに、内視鏡手術体験や模擬手術体験として鶏肉を電気メスで切り開いたり専用器具で切り口を閉じたりするコーナーもあった。
小学5年の岡野萌音(もね)さん(11)と4年の萌留(める)さん(9)の姉妹は「物をつかむ感触がないので力加減が難しかった」「ほぼ思った通りに動かせたので楽しかった」とそれぞれ感想を述べた。
菅野(かんの)潔婦人科副部長は「最新の手術ロボを知ってもらういい機会。ゲーム感覚で楽しみながら病院や医学への関心を持つきっかけになれば」と話した。
同センターでは平成25年にロボット支援下手術を導入し、令和3年にロボット先端手術センターを稼働させた。
ダビンチSPは、直径約2.7センチの筒内にカメラ(内視鏡)と3本の専用鉗子が集約され、最少1カ所の穴で手術が可能という。また、自然孔(膣)から筒を挿入することで体表面に穴をあけない手術も可能。SPによる経腟的内視鏡手術は6月28日に1例目が成功し、既に10件以上となった。
菅野副部長は「婦人科について言うと、皮膚に大きなキズが残ることを気にされる方は多い」と説明する。
婦人科の手術件数は国内では多い、年間1500〜1600件。3分の1近くがロボット支援で行われ、令和3年度は446件で国内最多。ダビンチSPは5月15日に1例目の手術を行い、現在は50件を超えた。泌尿器科でもSP手術を今秋にも導入する見通しだ。
菅野副部長は「低侵襲手術を牽引(けんいん)する立場として、安全な普及に努め、症例や患者の適性などのデータを蓄積していきたい」と話した。(和田基宏)
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