脱炭素化や少子高齢化など社会環境が変容する中、コンビニエンスストアの店舗が様変わりしている。人手不足解消に向けた無人型店舗が実用に至れば、電気自動車(EV)の充電器や電動キックボードのポート(駐輪場)を設置する店舗も増加。地方では減少している書店を併設した店舗やバー併設型の店舗も現れるなど多様化している。顧客の利便性向上とともに、「ついで買い」にもつなげようと、各社は店舗の差別化に知恵を絞る。
ここ数年で新しいタイプの店舗づくりを積極化しているのがファミリーマートだ。昨年3月に親会社である伊藤忠商事と連携し、デジタル部門以外の新規事業を担当する部署を新設。人口減少で店舗を増やすことによる収益拡大が困難になる中、新たな市場開拓を図るための組織だ。
同4月には、電動キックボードのシェアリングサービスを展開するLuup(ループ)と資本業務提携した。電動キックボードのポートを設置する店舗を急拡大させ、既に5都府県の約60店舗で設置を完了。来年2月末までに100店舗での設置を目指す。
今年6月には国内のコンビニ業界で初めて米テスラのEV用急速充電器の設置にも乗り出した。「ポートや充電器など新たな移動手段の拠点を求めるようになれば、コンビニに通う頻度も増える」と期待し、今年度内に設置店舗を7店舗まで増やす。
これに対してローソンは、地方を中心に違ったアプローチでの店舗展開で差別化を図っている。着目したのは、人口減少や通販の普及で急速に地域で数を減らしている「書店」だ。出版文化産業振興財団(JPIC)の調査では、全国の市町村の4分の1が「書店ゼロの空白地帯」とされ、そうした地域に需要創出の可能性を見いだした。
具体化したのは令和3年6月。埼玉県狭山市の店舗を「書店併設型」に改装し、弁当や日用品といった通常のコンビニ商品に加え、本や雑誌など約9千タイトルをそろえた。
すると、帰宅時間の遅い会社員や最新のコミックをいち早く読みたい若者のニーズをとらえた。現在、書店併設型は28店に広がり、本や雑誌などの売上高が平均で約20倍となり、女性の来店客も1〜2割増えたという。潜在需要は大きいとみて、同店舗を7年2月末までに100店に拡大する方針だ。
一方、最大手のセブン−イレブン・ジャパンは、イトーヨーカ堂などを展開しているグループの小売り事業の規模を生かした新コンセプト店舗の展開を急ぐ。
今年度中の開業を目指すのはコンビニとスーパーを融合させた新型店舗「SIPストア」。店舗の広さは100坪程度で、品数は5千品程度と従来のコンビニの約2倍を確保する。青果、精肉、鮮魚といった生鮮三品やファストフードなども取りそろえ、地域のニーズに合わせた店舗づくりを構想している。(西村利也)
copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上