店舗での販売が主流のアパレル業界でもEC(電子商取引)が広がり、今や全アパレル販売の約2割がECという。消費者はECで購入した洋服のサイズが合わなければ返品するが、体にフィットする洋服をECでも購入できるサービスが注目されている。メイキップ(東京都新宿区)のアパレルEC向けサイズレコメンド(推奨)サービス「unisize(ユニサイズ)」だ。購入者の満足度が高まり、返品が少なくなるのでアパレルEC側のコスト削減にもつながるという。
洋服のS、M、LといったサイズはJIS(日本産業規格)で決まっているものの、同じアパレルメーカーでもブランドが異なると、サイズ表示は同じでも微妙に大きさが違う。サイズ表示だけで体にフィットする洋服を選ぶのは難しく、試着が不可欠だった。
メイキップは、アパレルメーカーが公表する商品情報や自社で蓄積したユーザーの登録情報などからブランドごとに想定するユーザーの体の大きさを解析してデータベース(DB)化し、内外の約4万ブランドの商品データ6百万件超と購入履歴7000万件を蓄積している。
ユニサイズは、このデータベースと購入者の体形データからAI(人工知能)が購入者の体に合った洋服のサイズを推奨する仕組みだ。
購入者の体形データは、ユニサイズを導入したアパレルECサイトのスマートフォン画面に表示される「おすすめサイズを確認する」をクリックし、性別や身長、体重、よく着るブランドとそのブランドのサイズなどを入力する。また、スーツなどを扱うECサイトでは、スマホで全身の正面、側面の写真を撮影するだけで体の詳細なデータが計測される。
ユニサイズ開発のきっかけは、筑波大ラグビー部OBの柄本(つかもと)真吾社長(42)が、足が太いため欲しかったブランドのジーンズのサイズが合わず、買えなかった経験だった。サイズで悩まない社会の実現を目指し、平成27年にメイキップを設立した。
ECサイトでも自分の体にフィットする洋服を購入できれば返品は少なくなる。ユニサイズを導入したあるアパレルメーカーでは、6.37%だった返品率が導入後には4.73%に改善した。柄本社長は「返品が少なくなればECサイト側はコストを削減できる。輸送時にトラックから排出される二酸化炭素(CO2)を減らせ、ドライバー不足が懸念されている物流2024年問題の解消にもつながる」と話す。
国内ではアオキ、デサント、ラコステなどアパレル大手を中心に約250のECサイトでユニサイズが稼働しており、「3年後には国内有力サイトの過半数、500超に拡大する」と柄本社長は意気込む。
(遠藤一夫)
メイキップ 柄本真吾氏がデジタルマーケティング関連企業などを経て平成27年に設立した。社名の「メイキップ(Makip)」は、「Make it possible(可能にする)」からの造語。ユニサイズは日本語のほか、英語、中国語、韓国語にも対応。今年から欧州を中心に海外展開に乗り出し、5年後には売り上げの海外比率を5割超にする計画。来年にも上場を目指す。業績は非公表。
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