トヨタ自動車は19日までに、工場から出荷する車両を運搬車に運ぶ完成車物流を無人化する方針を明らかにした。物流業界の人手不足が懸念される「2024年問題」に対応し、人海戦術で行っている完成車の移動作業を段階的に自律走行する搬送ロボットに切り替える。まず主要拠点の元町工場(愛知県豊田市)で令和6年末までに切り替えを完了し、他工場へも順次展開していく方向だ。
元町工場では、今月から「VLR」と呼ぶ車両の自動搬送ロボット1台の運用を始めた。VLRは荷台が昇降・伸縮して異なるサイズの車に対応。高精度の衛星利用測位システム(GPS)による交通管制で、最適な経路で車両を運ぶ。
同工場では、生産した完成車を専門作業員が運転し、約4万平方メートルの「完成車ヤード」で出荷先別に仕分けして所定の位置に移動させ、運搬車への積み込みに備えている。炎天下や雪の降る中でも昼夜実施する作業は厳しく、人手不足も深刻化しているため、6年末までにVLRを10台に増やして移動作業を無人化する。作業員は負担の小さいロボットの保守業務などを担当する。
一方、トヨタは令和8年に投入する予定の次世代電気自動車(EV)の自走生産ラインの実証の様子を元町工場で同日までに公開した。組み立てた完成車が無人運転で検査工程へ移動する技術を一部で実用化済みで、現在は次世代EV向けに、ベルトコンベヤーを使わず、車両が自走する組み立て生産ラインの開発・実証に取り組んでいる。実用化すれば生産から検査、出荷準備までを一貫して車両が自律移動する「次世代工場」の実現が近づくとみられる。
カメラやセンサー、無線通信技術を使って自動制御された次世代EVの開発中の車体ベースがゆっくりと自走する。車両は時速0.36キロで動き、作業工程の進捗(しんちょく)などに応じて同0.01キロ単位でスピードを細かく制御できる仕組みという。
車体ベースは上からの部品組付けが容易な構造で、ベルトコンベヤーの制約もなく、間近から小型ロボットが座席シートをスムーズに自動設置する効率的な作業を可能とした。
自走生産ラインは製造設備のレイアウトの自由度を高めて、より働きやすい環境を整えるのが大きな狙いの1つで、実証を通じてその具体化が進んでいる。(池田昇)
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