脱炭素に向けて、自動車大手が資源循環や水素利用などで環境負荷を低減した車づくりを強化している。ホンダは令和9年をめどに、リサイクルが困難とされているナイロン樹脂製自動車部品の再生品の実用化を目指す。一方、トヨタ自動車は、工場で使うガス代替の水素使用量を12年をめどに現在の20倍超に増やすほか、新たな塗装方式など、二酸化炭素(CO2)排出量を削減できる新生産技術の適用を広げる。
ホンダは、子会社の本田技術研究所が、東レと共同で、使用済みのエンジン系ナイロン樹脂部品を同じ品質の部材として再利用するリサイクル技術の実証実験を始めた。
両社は「亜臨界水」と呼ばれる高温・高圧の水を使ってナイロン樹脂を分子状態に戻すことに成功。この技術を使い、年間500トンのナイロン樹脂の処理設備を導入し、8年3月まで実証を行う。
今回の実証技術はナイロン樹脂以外のプラスチック原料にも応用できる見通しで、実用化されれば、幅広いプラスチック部材の再生利用の効率化につながる期待がある。
欧州連合(EU)では、欧州委員会が7月、自動車の設計・廃車管理に関し、新車生産に必要なプラスチックの25%以上を再生プラスチック(このうち廃車由来25%)とすることを求める規則案を発表するなど、資源循環を義務化する動きが強まっている。
スウェーデンの自動車大手、ボルボ・カーズは既に、電気自動車(EV)の最新車種「EX30」に使うアルミの約25%、鉄、プラスチックは各約17%をリサイクル素材とし、資源循環を前提とする新車開発を推進。日本メーカーもアルミなどの再生材の活用を進めており、ホンダは、使用済みのアクリル樹脂を車体に再利用したEVのコンセプト車を10月25日に開幕する「ジャパンモビリティショー2023」で世界初公開する。今後、資源循環の取り組みは自動車業界全体に一段と広がる見通しだ。
一方、トヨタは国内工場の塗装や鋳造などの生産工程で使っているガスを順次、燃焼時にCO2を出さない水素に転換する。都市ガス並みのコストとパイプラインによる供給環境を前提に、水素の年間使用量を現在の約250トン(ガス使用量の1%未満)から、12年をめどに約5500トン(同15%)に引き上げる。
また、空気を使わず、静電気の力で車体を高効率で塗装する技術などにより、余分に飛散する塗料を回収・水処理する大掛かりなシステムを不要とした新塗装設備の適用も拡大する。新設備は従来設備の塗装工程に比べてCO2の排出を約36%削減できるという。
トヨタは17年に工場のCO2排出を実質ゼロにする目標を掲げている。(池田昇)
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