警視庁サイバーセキュリティ対策本部長を兼任する田中俊恵副総監は、近年のサイバー犯罪情勢や警視庁のサイバー犯罪対策について産経新聞のインタビューに答えた。身代金要求型ウイルス「ランサムウエア」の被害が後を絶たないことに加え、全国のインターネットバンキング(ネットバンク)で不正に口座から預金が引き出される被害など、深刻化するサイバー空間への対処について語った。(聞き手 大渡美咲)
――最近のサイバー犯罪情勢は
「サイバー空間は重要な社会経済活動を行う公共空間になっている。ネットバンクの不正送金の急増やランサムウエアの被害も多発している。G7広島サミットでは広島市のウェブサイトにサイバー攻撃が行われ、閲覧障害が起きた。サイバー空間を巡る脅威は非常に深刻だ」
――フィッシング詐欺の手口や特徴は
「銀行をかたったSMSなどのフィッシングメールを通じて、銀行のフィッシングサイト(偽サイト)に誘導し、ネットバンクのパスワードやID、ワンタイムパスワードを窃取して、預金の不正送金を行う。そのほかにもクレジットカード会社や大手ショッピングサイトを装ったフィッシングサイトが依然として多い」
――被害に遭わないための対策は
「心当たりのないメールは無視する、メールに記載されたURLはクリックしない。銀行の公式アプリや公式サイトからアクセスする、ログインパスワードは使い回ししないようにしていただきたい」
――サイバー攻撃の脅威も増している
「7月には名古屋港の物流管理システムがサイバー攻撃を受けて物流が停止する被害が発生した。学術関係者などに講演依頼や取材依頼を装って不正なプログラムを実行させ、情報窃取を試みるサイバーインテリジェンスが多数確認されている」
――新しい攻撃手法で注目するべきものは
「例えばランサムウエアでは、データを窃取して暗号化し、公開をほのめかして対価を要求する二重恐喝や、暗号化を行わずデータの公開をほのめかして対価を要求するノーウエアランサムという従来と異なる手口が確認された。警視庁では、サイバー攻撃を受けたコンピューターや使用された不正プログラムを解析し、攻撃者や手口に関する実態解明を進めている」
――警視庁ならではのサイバー犯罪捜査の強みは
「サイバーセキュリティ対策本部、公安部、生活安全部、刑事部、都警察情報通信部といったサイバー関連部署を一カ所に集約して横断的な体制を構築している。また、道府県警の捜査員を受け入れ、初動捜査や検証、防犯カメラの回収などの捜査共助を行い、全国捜査の効率化やスキルの共有を図っている」
――サイバー犯罪対策で気を付ける点について都民、国民へのメッセージを
「スマートフォンの普及でネットの利用が進み、だれもがサイバー犯罪の被害者になる可能性がある。ネットを利用する一人一人が高いセキュリティー意識を持つことが重要。最新のセキュリティー情報に関心を持って対策を取っていただきたい。身に覚えのないメールが届いた、パソコン画面に不審な警告が出たときには不安に感じるかもしれないが、最寄りの警察署にご相談ください」
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