上場延期を繰り返し、時価総額は当初の想定よりも半減以下となるが、業績や市況が安定しているタイミングを選んだ。
半導体メモリー大手のキオクシアホールディングスが18日に東京証券取引所で最上位のプライム市場に新規上場する。上場延期を繰り返し、時価総額は当初の想定よりも半減以下となるが、業績や市況が安定しているタイミングを選んだ。上場後は生成人工知能(AI)の普及で、需要が拡大するデータセンター向けを伸ばせるかが成長の鍵を握りそうだ。
東芝のメモリー事業を前身とするキオクシアがようやく新規上場する。同社はスマートフォンなどで使われるデータ記憶用のNAND型フラッシュメモリーで世界3位。不正会計を起こした東芝は米原発子会社の経営破綻で債務超過に陥り、2017年にメモリー事業を分社化した。
18年に米投資ファンドのベインキャピタルや韓国メモリー大手で世界シェア2位、SKハイニックスなど日米韓連合が約2兆円で買収した。現在はベインやSKなどによる特別目的会社が56.2%、東芝が40.6%、光学機器大手のHOYAが3.1%出資する。
キオクシアは20年8月に東証から上場承認を受け、時価総額2兆円を計画していた。だが、米中貿易摩擦による輸出制限の影響などを理由に上場を中止。今年8月に再び上場申請し、1兆5000億円の時価総額を目指したが、半導体株が軟調だったため再延期した。
12月18日に上場するが、株式売り出し価格は1株1455円で、時価総額は約7840億円となる見通し。調達金額もわずか277億円に留まる。時価総額は当初の想定よりも大幅に下回るが、「業績が良くなり、AI向けデータセンター需要が拡大すると見込まれるタイミングを選択した」(キオクシア)と説明する。
市況の悪化で、同社は23年3月期と24年3月期は純損益が赤字だった。直近の24年4〜9月期は市況が回復し、純損益は1759億円の黒字に転じた。ただ、財務状況は芳しくなく、有価証券報告書によると、借入金が1兆1千億円に上る。
18年に東芝から買収する際の借入金が重荷となり、業績悪化で返済が滞った。金融機関関係者は「2期連続の赤字で融資の財務制限条項に抵触する恐れがあり、財務基盤を強化するため上場を急いだ可能性もある」との見方を示す。
上場後は株式売り出しで出資比率はベインなどの特別目的会社が約51%、東芝が約32%に下がる。キオクシアは議決権のある株式に転換できる社債型優先株(転換社債)を発行する。SKが保有しており、上場後に株式転換すると、出資比率が約14%となり、第三位の株主になる。28年までは15%以上の株式を保有しない契約となっており、それ以降は増やせる。
キオクシアは業績が悪化し、23年に世界シェア4位の米ウエスタンデジタル(WD)と統合協議を進めたが、SKが反対し、破談となった。経営統合すれば、世界シェア首位の韓国サムスン電子と肩を並べる規模になるはずだった。それだけに転換社債を保有するSKの動向が注目される。
上場後について、英調査会社オムディアの杉山和弘コンサルティングディレクターは「キオクシアはNANDが中心でスマホ向けが多く、データセンター向けが少ない。そこを伸ばせるかが重要になる」と語る。
AIデータセンター向けのメモリーは一時記憶用のDRAMを積層し高速なデータ転送に使われる「広帯域メモリー(HBM)」の需要が伸びている。同社はNAND製造のみで、DRAMの開発を進める。杉山氏は「DRAMをしっかり立ち上げて投資すれば、株価も上がる」と指摘する。(黄金崎元)
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