AIベンチャーから体験型の親子向けサービス起業 「真逆」の試みに挑む36歳男性

人工知能(AI)を使った技術開発に取り組む東京大発ベンチャー企業に勤める男性が、実体験でしか味わえない、親子向けのサービス事業を起業した。

» 2025年05月02日 10時03分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 人工知能(AI)を使った技術開発に取り組む東京大発ベンチャー企業に勤める男性が、実体験でしか味わえない、親子向けのサービス事業を起業した。主業務にかかわるAIは人の知覚や知性、認識などを人工的に再現する技術。最新の技術にかかわる一方で、その真逆にあるともいえる実体験に焦点を当てたのはなぜか。

「未来の子供たちに何を語れるか」

体験型サービス「memee」を立ち上げた加藤達哉さん

 男性は、平成28年に創業し、AIを軸としたサービスを手掛けてきたSAPEET(サピート、東京都港区)のカルティ事業部長を務める加藤達哉さん(36)。同社は、企業が持つ隠された知見をAIで解析し、企業価値を高める支援事業を運営している。加藤さんは、最先端のAI技術の提案営業を担ってきた。

 加藤さんが起業したのは「株式会社LudensMan(ルーデンスマン)」で、主な事業は、体験型サービス「memee(ミーミー)」だ。ユニークな活動を行う講師たちが街や自然、アート、科学などの分野で、その場でしか味わえない体験づくりを提供する。親子を対象に、年齢にかかわらず、夢中になれる体験プラットフォームを目指している。

 起業は、3年前に第1子が誕生したのを契機に考え始めた。「未来の子供たちのために何ができるのか、何を語れるのか」。考え抜いた末、加藤さんは「身近なところにある『すごいこと』を子供にも、その親御さんにも伝えたい。その橋渡しができれば、世界の見え方が変わるのではないか」と思い至った。

 現代はインターネットでいつでもどこでもつながることができ、AIで人の知見や認識まで再現できる。その中で、ミーミーは、そんな時代にその場でしか見聞できない体験を味わってもらい、社会の在り方を考えてもらおうという試みでもある。

「新たな自分の再発見」

 「遊びを、学びへ」「体験を、経験へ」をテーマとし、分野は、科学や哲学、ミュージカル、さらに国連の持続可能な開発目標(SDGs)など多岐にわたる。1回の参加費は2500円(一部3000円)。講師は、それぞれの領域で「伝える」活動しながら、一般に知られていないものの、有意義な活動をする専門家たちだ。

 例えば、5月25日に実施する「大磯のビーチクリーン」は神奈川県大磯町の大磯ロングビーチを中心に活動する「ブルー・ガーディアンズ」(平塚市)の代表理事、清水昌也さんが講師を務める。

 ペットボトルやポリ袋などの投棄などで発生する海洋プラスチックごみは、海の生き物の暮らしを阻害する恐れがあるとして社会問題化している。清水さんらは、海洋プラごみの回収や削減とともに、海洋環境のデータ収集や分析なども行うなど、社会課題の解決に向けて取り組んでいる。

 当日は午前10時〜12時、大磯の施設でそうした現状を学んだ後、実際に海岸に出てマイクロプラスチックごみの回収などに取り組む。加藤さんは「自分がいまは知らなくても、大切なことはたくさんある。世界は広い。知らないことを実際に体験することによって、新たな自分自身と出会ってほしい」と話している。

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