お店屋さんなど誰もが幼少期に楽しんだ“ごっこ遊び”。それがスマホやタブレットのゲームに進化し、社会体験・知育アプリとして人気だ。
お店屋さんなど誰もが幼少期に楽しんだ“ごっこ遊び”。それがスマホやタブレットのゲームに進化し、社会体験・知育アプリとして人気だ。キッズスター(東京都渋谷区)が展開する「ごっこランド」は大手企業を中心に90社が「出店」して自社の商品やサービス、メッセージをゲームに載せて親子に届けている。たかが遊び、されど…。そのごっこが将来の夢になるかも!? 子供たちの職業・社会的自立を育む、キャリア教育の出発点になる可能性も秘めている。
建設工事現場の「足場」ゲームをやってみた。画面をタップして、パズルをはめ込む要領で早く高く積み上げることを競う。「5階クリア」「よしっ!」と励ましの音声が流れ、安全にマンションが完成した。
足場設計施工企業のゲームだ。小学1年の今泉美琴さんは街中で足場を見つけ、「あ! ゲームにあったのこれだね」と母親の歩美さん(42)に声をかけたという。「ゲームが現実とリンクしている。普段は意識していないけれど大事な仕事が多数あって、支え合い社会が構成されているという気付きにつながっているみたい。トイレットペーパーなど、身近な商品がどうやって作られているかもゲームを通じて親子で知った。いろんな職種があってハマっています」と、ゲームに熱中する子を見つめた。デザイナー職の歩美さんは「子供の目に入るものは大事。質の低いゲームや動画は見せたくない。ママ友の間では、広告が入ってこないことも高評価です」
ごっこランドの使用料は無料。1ゲーム約3分間に、子供の目を引く動きと演出、励ましのナレーションが展開する。毎月7〜8万のダウンロードを獲得し累計770万。年間2億回以上プレーされている。
スマホが普及しだした12年前、3〜9歳を対象に始まった。キッズスターの平田全広(まさひろ)社長(52)は、「子供の成長には多様な体験が必要だが、居住地や親に左右される」と指摘。「狭い社会しか知らない子は、夢や学習意欲を持ちにくい環境にある。誰もができるゲームで体験格差を補えないか」。小さかった2人の息子に試作品で遊んでもらい「簡単すぎる」などのダメ出し点を改善。能力と挑戦のバランスに着眼した「フロー理論」を参考に不安や挫折を感じさせず、頑張りが達成感に結び付くほどよい難易度で設計した。
ゲーム開発や運営経費は出店料で賄われる。取材後に社外秘といわれたので書かないが、額の大きさに企業側の“熱”を感じた。
一昨年から出店している能美防災では、「災害が多発するなか防災・減災の知見を子供たちに届けたいと考えていたが、BtoB(企業間取引)事業体のためルートがなく、ゲームを通じてつながれることに魅力を感じ社内で提案した」と自然災害研究担当・防災士の佐々木聡文(あきふみ)さん(49)。火事、地震、水害を想定したゲームは月間20万以上プレーされる人気だ。
週末に商業施設で開いているイベント「ごっこランドEXPO」にも積極参加。防災クイズを行い、避難時携行品を恐竜の卵を模したカプセルに詰めて持ち帰ってもらう。「子供の素直な反応、ファミリー層と接することで、社員のやる気も上がっています」。今月は28日アリオ深谷(埼玉県深谷市)、29日アリオ葛西(東京都江戸川区)で予定。予約不要・無料(レシート提示が必要な場合あり)だ。
日本航空は、新型コロナウイルス禍で大打撃を受ける中でも出店継続した。「飛行機をお絵描きするとき、JALの赤いマークを入れてもらえるくらい親しんでほしい。パイロットとCAだけでなく、いろんな仕事をする人がいて飛行機ぶことを知り、未来を考えるきっかけにしてもらえたら」とマーケティングコミュニケーション部。
ごっこランドは自然発生的に、日本語のまま東南アジアで遊ばれる現象が起き、一昨年スタートしたベトナム版が150万ダウンロードと絶好調。日本発だけに、本国の出生率の低さが残念ではある。(重松明子)
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