アマゾンの生鮮品宅配は危険領域!?――先進ネット企業の次の一手:グローバル化するプラットフォーム(2/2 ページ)
米インターネット企業の動きが活発だ。グーグルやアマゾンは、これまでのWebサービスからソフトウェア、コンテンツ、流通など事業の幅を広げている。その動向を追う。
米国で新たな大型物流拠点の設置を発表したことは、今後の事業成長へのさらなる自信の表われだろう。既に日本でも開始している年会費制の送料無料サービスの延長として、米国では日用品を中心にした消耗品の定期配送サービスにも着手している。
さらに地元シアトル市限定で、生鮮品の宅配サービス「アマゾン・フレッシュ」の展開に着手した。当初は従業員とその近親者限定の招待制で実証実験フェーズにあったが、9月上旬から正式なサービスに移行した模様である。利用者には専用のコンテナが割り当てられ、それを介した商品のやり取りが行われる。これなどは一見、インターネットやソフトウェアから離れた、EC事業者としてはある意味「危険な」領域とも思えるのだが、その背景にRFIDのような新しいITの存在を想定してみれば、同社の新たな成長戦略に向けた野心がうかがい知れる。
その対極に位置するものとして、デジタルコンテンツ配信事業の本格展開に向けた準備にも余念がない。既に米国ではデジタル動画の配信サービス「アマゾン・アンボックス」が開始され、最近アップルとの価格交渉が決裂したNBCテレビのコンテンツを獲得した。また、DRMフリーの音楽配信事業についても近くスタートが噂されている。パッケージコンテンツの流通で大きな影響力を有するアマゾンだけに、パッケージと連動した販売など一味違った展開が注目される。
かつて「超流通」という言葉がもてはやされたが、それを地で行く姿を現在のアマゾンにはっきりと見ることができる。
(「月刊アイティセレクト」掲載中の好評連載「新世紀情報社会の春秋 第二十回」より)
なりかわ・やすのり
1964年和歌山県生まれ。88年NEC入社。経営企画部門を中心にさまざまな業務に従事し、2004年より現職。デバイスからソフトウェア、サービスに至る幅広いIT市場動向の分析を手掛けている。趣味は音楽、インターネット、散歩。
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