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アップルの復活とプラットフォーム戦略(後編)新世紀情報社会の春秋(1/2 ページ)

アップルの躍進は商品デザインやインタフェースにおけるイノベーションだけでなく、ソフトウェア企業として着々と取り組んできたOS開発の成果が大きい。

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新商品を支えるソフトウェア戦略

 アップルが新たな商品ラインアップを実現するに際して、ソフトウェアの役割は極めて重要である。その中核が元来Macintosh用のOSとして開発された“MacOS X”だ。同社は公式には認めていないが、今年になって発売された新商品(iPhone、Apple TV、iPod touch)には、いずれもMacOS Xのカスタマイズ版が搭載されている。

 リビングルームのメディアサーバを提案するApple TVの中身は、安価なインテル製のCPUにMacintoshシリーズとほぼ同じ構成の専用OSをHDDに格納したものだ。調査会社のiSuppli社は、同製品を「旧世代のコンポーネントを使ったPC」と結論付けた。家電ベンダーとの競合を意識したコスト戦略から光ディスクや録画機能は搭載されていないが、Macintoshシリーズにいまも残る“Mac mini”は将来のApple TVの姿にも映る。299ドルという価格が実現できた背景には、旧世代部材の流用だけでなく、高機能の自社製OSの存在が大きく貢献している。

 一方、モバイルでの新しいデジタルライフスタイルを提案するiPhoneとiPod touchについては、外見やインタフェースが酷似していることからもわかるように、両者の基本的アーキテクチャはほぼ同じと考えるのが自然だ。その中身は複数のティアダウン(分解)レポートから、CPUに高機能モバイル系チップで有名なARM社のコアを採用しているようだ。

 アップルがMacintoshシリーズのCPUをIBMからインテルに乗り換えた理由の1つとして、IBMの限界が露呈したノートブック型PC向けCPUの省電力技術に関して、インテルから明確なロードマップが提示されたことが知られているが、さすがのインテルも、さらに小型の携帯機器向けのCPUでは、まだアップルのニーズにあった製品を提供できなかったようだ。

 iPhoneのOSについては、会社はそれを“OS X”と説明している。iPhoneの開発にMacOSのエンジニアが必要という理由で、予定されていたMacOSの新製品リリースを延期している。iPhoneに搭載されたブラウザやウィジェット環境などは、現行のMacOSに標準搭載されているものと基本的には同じだ。これらのことから、搭載されているOSはいわば“MacOS Mobile”と呼んで差し支えないだろう。

iPod touchの製品仕様にはOSに関する記載はない。しかし、くり返しになるが、それがiPhoneと別物と考える方のはむしろ不自然だ。iPod touchの技術スペック(具体的には作業用メモリの容量や消費電力の問題)が解決されれば、iPod touchでもメールやGoogleマップなどが作動するのは時間の問題だろう。あとは技術というよりも、むしろ商品コンセプトの問題だと考える。

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