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【第3回】世にもおかしな日本のIT組織(3)〜IT部門から消えた次世代三方一両得のIT論 IT部門がもう一度「力」をつける時(1/3 ページ)

かつては業務の流れ、業務基準を熟知している生き字引のような人がIT部門にいた。システムのブラックボックスよりも、業務全体の最適な流れを把握する人材がいなくなったことはもっと危険だろう。

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 勝ち組と称されるグローバル製造業は元気だ。しかし、企業を支える現場はどうだろう。余裕などという言葉はなく、休みなく働き続けている。

 生産、営業部門はもちろん、間接部門も売り上げの伸び以上の業務量を従来どおりの要員でこなしていかなければならない。さらに、そこに降りかかっている内部統制対応は、これまで効率化してきた業務手順を省略せず、適切に遂行することを求めている。とても、毎日の仕事がその日に終わる量ではない。

 なぜ、世界一の生産性、品質を実現して来た日本の製造業がこんなことになってしまったのだろうか。普通に考えれば、本業のものづくりと同様に、間接部門の仕事も効率化、省力化が達成されていてもおかしくない。わたしはこの10年、あまりに目先の成果や海外ITベンダーの戦略に踊らされてしまったのではないか、と感じている。

バブル期の新人採用合戦

 1990年代は、バブル期の新人採用合戦で始まった。企業は、新卒獲得のためにフレックスタイム制勤務の導入し、独身寮の新築、内定者の研修旅行など、さまざまな手段で新卒の獲得にはしった。IT部門もそれにあわせて、大量の新卒を採用し、集合研修やOJT、OFF-JT(職場外教育)にお金と時間を費やしていった。

 そのころのわたしは、毎年40〜50人のIT部門に配属される新人の研修を担当していた。集合研修は半年間掛けてやり、その後、部門に配属しOJTとフォロー研修を繰り返し、一人前のSEに育てていく。売り手市場で採用した新人だから、ITの基礎知識もない社員がほとんど、モチベーションも低く、毎日が戦いだったことを覚えている。これが3年間続いた。

 わたし自身もこの3年間で、人を育てること、人と向き合うことを勉強したと言える。集合教育とはいえ、人は画一的な教育では育たない。1人1人の変化を日々観察しないと、脱落者が出てしまう。

 毎日全員の研修日誌を読み、必ず全員にコメントを書き、1人1人と向き合うようにした。エンドユーザーの気持ちを読む力が付いたのも、この集合研修のお陰だといってもいい。わたしの考えや課題の答えを押し付けるのではなく、新人が考えた異なる切り口の答えを尊重し、彼らが納得いくまでやらせたことも昨日のように思い出される。

リストラの大波にのみ込まれた新人たち

 これだけ手塩に掛けて育てた新人たちなのに、バブルが弾けた途端にリストラの波にのみ込まれていくことになった。コスト削減、間接部門の人員削減という大波が押し寄せたのだ。

 利益を第一にする企業にとって、売り上げが伸びなければ、経費を削減して利益を搾り出すのは当然のことだ。IT部門も間接部門である。しかも、非常に多くの要員を抱える部門になっていた。会社としては、間接部門の人員削減目標をいかに迅速かつ容易に達成するかを考え、結果として、IT部門に真っ先にリストラの白羽の矢を立てた。

 どの企業でもそうだが、部門としての成果が見え難いだけに、IT部門は少しぐらい人数が減っても経営には影響がない、と判断され、営業部門や工場への異動が言い渡される。

 そこで異動候補に挙げられたのが、バブル期に採用した若手社員たちだった。

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