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人を育てられないリーダー、育とうとしない若手(1/2 ページ)

組織の人材育成力の低下が激しい。背景には雇用形態や人材の多様化、上下関係の流動化などさまざまな原因があるが・・・・・・。リーダーに求められる人材育成能力とは?

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 「企業は人なり」と言われる。リーダーにとって企業を支える人材を継続的に育てることは大きな役割の1つだが、組織の人材育成力の低下が激しい。背景には雇用形態や人材の多様化、上下関係の流動化などさまざまな原因があるというが、変化の激しい時代の中で、リーダーはどう部下を育てていけばよいのだろうか?

 1月24日、早稲田大学でエグゼクティブリーダーズフォーラムが開催され、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の高橋俊介教授が講演した。同氏は『キャリアショック』の著書などで知られ、人事組織コンサルティング会社のワイアット(現ワトソンワイアット)の社長を務めた経験を持つ。

 高橋教授によると、人の成長は内なる動機(ドライブ)に気づいたときから始まるという。周囲からのフィードバックやアセスメント、上司の背中を見てなど、さまざまな機会の中で自身の内側に持つ強い動機に気づき、新しいことへチャレンジや試行錯誤の過程で能力として身に付ける。このサイクルを習慣化することで、人間は無意識でもその能力を発揮できるようになる。

 「このサイクルを生み出せる環境を組織としてつくれるリーダーシップが求められている」と、高橋氏は言う。

人材育成能力を低下させたもの

高橋俊介氏
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の高橋俊介教授

 組織の人材育成能力の低下には、さまざまな要因が絡み合っているようだ。

 組織側の問題は、採用の手控えが長く続いたことによる管理職の指導経験の不足、さらには非正社員の増加でそもそも管理職の育成モチベーションを低下させたことだ。

 「企業は長い間、採用を手控えてきた。その結果、後輩の面倒をみるという経験がなくなった。だから、若者に特有の場面特異性のうつ症状にどうやって対処してよいかも分からない。さらに部下が10人いるといっても正社員は3人しかいような状況では、育成のモチベーションすらわかない」

 一方で、育成される側となる若者の社会性の低下も成長を実感しにくくさせた。これはITの普及による弊害でもあるという。コミュニケーションツールとしてITを駆使する若者は、嫌な人とは話をしなくてすむ中で育ってきた。「嫌でもやる」という成長の機会を受け入れにくくなったのだ。

 「メールを使えば、嫌いな人とは話をしなくてもよくなった。携帯電話がなかった私の若いころは、彼女に電話しようとしても親父が出るということがあった。会ったこともない相手の声だけを頼りに、なんとか良い関係を築き、彼女につないでもらう」

 「嫌でもやらなきゃいけない」というプレッシャーが人間を成長させ、それを実感させる。特にフェースtoフェースのコミュニケーションは、本人の成長実感との相関関係が高いことが調査からも明らかになっているという。

 営業職やエンジニアの成長実感を比較すると、否が応でも他人との直接コミュニケーションを必要とする営業職の方が圧倒的に成長を実感していることが分かっている。

 さらにITの業務への普及は、企業にとって予想外の側面も生み出した。個人の業務のブラックボックス化だ。「日本の大部屋というのは仕事が上司に見えたのが良かった。隣の席で間違いがあれば、すぐに指摘できた。しかし、メールでやり取りされてしまってはどんな仕事の仕方をしているか分からない。チームワークが機能しなくなったのもここに原因がある」

 上司・先輩の仕事を見て、自身の成長のきっかけとなる気づきのチャンスを失わせてしまった。

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