「知り合い」「信じあい」「やる気」――手続き的統制を阻む業務の現実(1/2 ページ)
2008年4月、金融商品取引法に基づく内部統制報告制度の適用年度が始まる。ITmedia エグゼクティブが開催したラウンドテーブルから、内部統制の整備に試行錯誤しながらも立ち向かう企業の実態が見えてきた。
2008年4月、金融商品取引法に基づく内部統制報告制度の適用年度が始まる。いわゆる日本版SOX法に向け、各社取り組みを進めている。ITmedia エグゼクティブでは1月31日、「内部統制、その先へ」と題したエグゼクティブラウンドテーブルを開催。内部統制整備に試行錯誤する企業の本音が見えてきた。
ITmedia エグゼクティブがラウンドテーブルに参加した企業幹部に対して行った事前アンケートによると、現在の進捗状況は「重点拠点の絞り込み」や「文書化」「内部統制の運用状況の有効性評価」段階などと、企業によってばらつきが見られる。
もちろん本番までに「内部統制報告書の作成」まで確実にできるようにしたいと答える企業が最も多かったが、アンケート調査からは進捗に不満感を持っている企業が半数近くを占めている。
「業務の現場に無理をさせない」
「これまでの仕事は“知り合い”“信じあい”、そして“やる気”という見えない支えが要だった。これからは、証跡を残し、仕事を誰からも見えるようにしなければならない。しかし、統制の必要性を実感できない現場はどうしてもやらされていると感じてしまう」と話すのは、新光証券IT戦略部IT統制室マネジャーの長嶺勧氏。
新光証券は2008年5月にみずほ証券との合併を控えている。合併の話が出るまでは、日本版SOX法をターゲットに内部統制の整備を進めていたが、今はみずほフィナンシャルグループの一員として、米国のSOX法に対応するための内部統制の整備を優先して進めているところだ。
「内部統制を整備するに当たり、無いよりはマシと考えて一番始めにルールや規程をつくった。これを、現場のマネジャーやスタッフなどできるだけ多くに説明して、少しでも理解をしてもらうよう努めている。実務上の無理がある場合や手続きが形骸化するようだったら、直ぐにルールを修正して、説明して――これの繰り返し。無理をさせず、本当の意味を理解してもらうことが大切だと考えている」
もし、ルールや手続きに無理があれば、極端な話、業務の現場は必要な書類に先に印鑑を押して保管しておくなど、内部統制を形骸化させる仕事の進め方をしてしまいかねない。そこで、新光証券におけるIT全般統制では「(設定した統制が維持できるのであれば)ルールや手続きはいつでも変えられる」という考えを前提に、徐々に現場への浸透と作業の効率化する方針をとっているという。
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