エンタープライズ2.0は縦割り組織を変革するエンジンに:Linden LabやP&Gも活用
企業規模が大きくなるにつれて、従業員同士のコミュニケーションや情報共有は難しくなる。人とのつながりを強化すれば、新たなビジネスチャンスも生まれる。エンタープライズ2.0は、そのような環境作りと経営の見直しに有効となる。
エンタープライズ2.0はWikiやブログ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などの技術を使って企業内の集合知を構築するという考えを指す。米国のアンドリュー・マカフィー教授が2006年に提唱したコンセプトであり、日本ではコラボレーションツールなどを提供する企業を中心にこの考えが広がっている。
エンタープライズ2.0を紹介するイベント「Enterprise2.0 SUMMIT 2008 TOKYO」が4月17日に都内で開催された。オープニングセッションでは、McKinsey & Companyでコンサルタントを務めるジョセフ・ニューサム氏が登場。経営を変えるエンジンになるとしてエンタープライズ2.0の可能性を紹介した。
企業の規模が大きくなるにつれて、従業員同士の意思疎通や社内における情報共有は難しくなる。多くの従業員を抱える企業では、小さな組織をいくつも作ってプロジェクトを進める。見知らぬ人や付き合いの浅い人と共同で業務を進めることも珍しくない。企業は、経営層をトップに置いた縦割りの組織階層となる。この状態では、組織の垣根を超えたコミュニケーションは難しい。
それを解消するのがエンタープライズ2.0だとニューサム氏は言う。従来のシステムに比べて安価で簡単に導入できること、日常的に使われているSNSやブログを使うため、従業員は簡単に情報を共有できることなどが強みとなる。Amazonや消費財メーカーのProcter & Gambleといった大企業がエンタープライズ2.0の技術を取り入れ、コミュニケーションを活性化させているという。
成功例として、3D仮想空間「Second Life」を運営する米Linden Labの取り組みを紹介した。同社はWebページを通じて従業員にフィードバックができるシステムを導入しており、評価を集めた人物にはボーナスが支給される仕組みだ。「企業の規模が大きくなるにつれて、人と人のつながりを強める仕組みは必須となる」(ニューサム氏)。
今後企業は縦割りの組織から、横のつながりを強化した組織作りを進めていく必要がある。人とのつながりや情報共有の活性化が思いがけないビジネスチャンスを生み出したり、ビジネスにおける機会損失を減らしたりすることにもつながるからだ。ニューサム氏は「企業はエンタープライズ2.0の技術を使って経営をどのように変えていくかを考えるべき」と話している。
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