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音楽販売でのロングテール化に見られる3つの側面新世紀情報社会の春秋(1/2 ページ)

インターネットがもたらした音楽販売ビジネスの変化は、ロングテール化がその底流にある。メガヒットの減少、ジャンルの細分化など、他のビジネスモデルの参考となる動きが目立つ。

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「iTunes Store」が全米最大の音楽小売業者に

 4月の始め、アップル社の音楽配信サービス「iTunes Store」が、販売楽曲数で全米最大の音楽小売業者になったとの発表があった。

 調査会社NPDグループの集計結果に基づくらしいが、あまり音楽が売れない年初の瞬間風速的側面もあるので、年間を通してはまだ分からないが、このままiTunesが年間トップとなったとしてもあまり驚くにはあたらない。

 インターネットの出現により、音楽を取り巻く状況は音楽販売だけでなく、生活者やアーチストの意識を含め、もはや前世紀のモデルから大きく変わりつつある。それはCDがネット配信に置き換わるという単純な話だけではない。今回はそうした音楽の変化について考えてみる。

メガヒットの減少とロングテール化

 著作権をベースに音楽ソフトの対価を得る「音楽販売」の市場は、世界的に見ても縮小している。その底流としていわゆる「ロングテール」の進行が上げられる。簡単に言えば、いわゆる「メガヒット」とは対極にあたるマイナー作品への需要がインターネットによって顕在化し、それがアマゾンなど無店舗型販売事業者の強みとなるというものだ。

 この議論の当初から、果たしてそれが音楽販売にとってプラスになるのかという指摘はあったが、データを見る限りその答えはノーということになる。音楽販売でのロングテール化は3つの側面で確実に進行している。


Fortuneの「最も有力なビジネスパーソン25人」ランキングで、Appleのスティーブ・ジョブズCEOが1位になった。

 1つ目はメガヒットのタイトル数や1枚あたりの売上枚数が減少していること。最近のCD販売の状況は極めて象徴的で、過去のアルバム販売の実績では、年間を通じて最も多く売れた作品の販売枚数は、過去5年間で半分以下に落ち込んだ。具体的には2003年に最も売れたNorah Jonesの“ComeAway With Me” が年間1221万枚売れたのに対して、07年のベストセラーとなったAmyWinehouseの“Back to Black” は551万枚に過ぎない。

 2つめは、音楽ジャンルの細分化が進んだことで、そうしたメガヒットが特定の層だけに強く支持される、より小規模なヒットに移行していることが考えられる。

 さらに3つめとして、熱心な音楽愛好者達の興味対象が、ロングテールの最たる部分であるマイナーレーベルやインディーズといった領域にシフトしており、その実体は年を追うごとにさらに細分化しその数を増やしていると筆者は考えている。

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