日米のオフショアの差は、インドのとらえ方にあった:トレンドフォーカス(1/2 ページ)
人件費高騰や米国景気後退などによる影響で、大手グローバルITベンダーのインド進出が本格化する中、インド企業はこれまでの欧米偏重を見直す動きが顕著になってきた。低迷していた日本市場へのテコ入れもその1つ。しかし、日本企業ではオフショアがアウトソーシングの域を出ず、インド企業をうまく使いこなせていないという。
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組み込み市場で体制強化 世界トップ10目指すTCS
業界トップのTCSは、創業140年のインド最古で最大の財閥、タタグループの一企業だ。タタ・スチール、タタ・モーターズに次ぐ売り上げ規模を持つTCSは、世界53カ国175拠点で事業を展開し、独自のグローバルネットワークデリバリーモデル(GNDM)で世界中の顧客企業の立地に近い拠点でサービス供給体制を敷く。
「インドのIT産業は、IBMなどのグローバルITベンダーとの熾烈な競争時代を迎えている。今後は北米市場偏重を見直し、日本を始め欧州や南米市場を強化する」と語るのは、TCSジャパンの代表取締役社長の梶正彦氏。
日本市場では組み込みシステム分野に注目し、07年の夏からサービス体制の強化を進めている。自動車、通信、半導体、産業機械、家電と、組み込み開発には20年の歴史を持つ同社は、GM、WVのほか、日系企業との関係も深い。
今回、インドのプネに日本向けの開発拠点を開設する一方、横浜にもラボ兼ショールームを用意した。今後3年以内に日本企業向けの開発技術者を4000人規模にまで拡大し、現在5%に満たない日本市場において、自動車や家電、通信、OA分野での取引を拡大していく計画だ。
「日本の現状は、ITベンダーが顧客のカルチャーを重視するあまり、従来の開発経験を再利用せず、一から構築を繰り返し大変な苦労をしている。当社はスタンダードプロセスの導入や開発の合理化提案を積極的にしていく」(梶氏)
またTCSは、最大のライバル国である中国にも競合に先んじて拠点を拡大し、今後数年内に5000人規模まで増強する計画だ。
近隣アジア企業のニアショアや中国国内の金融企業などへ市場を広げ、世界トップ10のIT企業を目指す。
設立当初からグローバル市場に特化したインフォシス
また、業界2位のインフォシスは、1981年に7人のメンバーで創業した比較的若い企業。87年には業界に先駆けてグローバルデリバリーモデル(GDM)を確立し、顧客側に20〜30%、ベンダー側が80〜70%の負荷比率が最も効率よく価格を抑えられる黄金比率を導き出した。
00年以降はオラクルとSAPに特化し、コンサルタントの人的リソースや豊富な情報力で高い評価を得ている。
また、インド国内の売り上げが1.6%程度という同社は、設立当初からグローバル市場に注力し、競合とは異なるインド色を払拭したアプローチで発展した。
日本では、08年2月に日本ユニシスとの戦略的アライアンス協定を締結し、ソリューション製品の共同マーケティングやコンサルティング業務、システムの開発などを計画していくと発表した。日本ユニシスはインフォシスのグローバルレベルの技術力やサービスリソースを活用し、国内市場の利益率を改善すると同時に、海外でのビジネス展開に役立てる。また、インフォシスも、日本ユニシスが得意とする日本の金融市場に向けたSI力や国内の販売チャンネルを活用することによって、日本市場拡大の大きな足がかりにしたい考えだ。
「今後日本国内においてはITエンジニアの労働力不足が深刻な問題になる。そこにインフォシスのエンジニアのリソースを供給することで、日本の産業が3Kから脱し、IT部門が社内のエリート部門として誇りを持てるような仕組みにしたい」と話すのは、インフォシステクノロジーズ アジア・パシフィックオペレーション マーケティング&ストラテジーマネジャーの安藤穣氏だ。
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