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「居眠り社長」が連絡会議で聞きたかったこと間違いだらけのIT経営(2/2 ページ)

ITベンダーとのやりとりの中で一番大切なのは、ユーザー企業ともども適度な緊張感を持って導入に臨むことだ。

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悪い話をしなさい

 従業員が3000人はいる製造業A社のトップBの、ITプロジェクトに対する取り組み方である。A社は、全業務を対象にERPを導入することになった。BはITには疎かった。しかし、何億も投資をするのだから絶対に効果を出さなければならないと言って、計画時点からERP導入に関心を持っていたようである。

 プロジェクトが発足すると、Bは2週1回開催されるベンダーとの連絡会議に必ず顔を出した。2時間あまりの会議にフル出席することがほとんどで、2、30分だけ顔を出すこともあったが、出張などでの不在を除くと必ず出席した。日ごろあれほどうるさいBが、連絡会議ではほとんど発言しなかった。発言するとすればただ一言、「うまく行っている話はほどほどにして、悪い話をしなさい」だった。しかも、なんと2時間出席のうち30分超は必ず居眠りをした。ある瞬間に、いびきさえかいた。その居眠りだけ見ていると、息抜きに出席しているのかとさえ思えたが、目を覚ましている間は必死に耳を傾けている風だった。Bが出席するだけで、会議の空気は常に張り詰めた。A社の幹部は、何をさし置いても連絡会議はもちろん、プロジェクトのフォローアップ会議にも欠かさず出席した。連絡会議には、ベンダーからも幹部が必ず出席した。

 おのずから両社間において個人プレーはまったく見られず、組織で動いた。ベンダーに丸投げすることなども起こり得ず、ベンダーもとことん誠意を持って対応した。

 Bが、ベンダーとの連絡会議にだけ出るというのも面白い現象だ。本来ITには疎いBが何をきっかけに思い立ったのか、そしてなぜそれほど執念を燃やすのか分からないが、おそらく何かが契機で、Bを突き動かしたのだろう。あるいは、何億も投資したのでただ心配だっただけのかもしれない。しかし、これほどトップがコミットメントすると、ベンダーとの関係だけでなく、ITプロジェクトすべてがうまく進むだろう。

 Bのやり方は特殊かもしれないが、ベンダー不信に陥ってITを敬遠するなどという理屈の前に、まず動き出し、しかも執念深く続けるBのやり方は、有無を言わさない、トップの1つの有効な方法論、あるいは姿勢を示唆している。

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