危機が重大化する構造――危機の本質とは:なぜあの会社は叩かれたのか(2/2 ページ)
企業の周りは、さまざまな危機が存在する。それらすべてを管理することは非常に困難だが、押さえておくべきポイントが存在する。
危機の本質
つかみづらく、常に揺れ動く社会の価値観には、一定の法則も見受けられる。
法則1:してはいけないことは
本当の危機とは、不可抗力による事件はもちろんのこと、不本意にも起こしてしまった過失だけでは訪れない。虚偽や隠ぺい、そして対処の仕方の間違い(不誠実と思われても仕方がない対応)によって引き起こされる。事件の端緒が他人によってもたらされた不可抗力な事件であったとしても、対処の仕方を間違えることで危機が起きる。最近では「食品テロ」として曖昧な結末を迎えた餃子事件において、某流通組織のトップが最初の会見で「われわれも被害者である」というコメントを述べた。その結果、同社のブランドが大きく損なわれたのは記憶に新しいところだろう。
法則2:怖いのは誰か
責任が追及される主体や方法、責任の在り方は以下の通りになる。
批判の主体 | 批判方法 | 責任の在り方 |
---|---|---|
警察・検察 | 法律(刑罰・賞罰) | 法的責任 |
官公庁 | 行政指導 | 官公庁の責任追及 |
マスコミ・市民 | 世論(=マスコミ) | 社会的責任 |
この中で、本当に怖いのは組織を断罪するのは「世論」である。さらに難しいのは、「社会的責任を果たす」ということが「法的責任を果たす」ということと同意義になるとは限らない点だ。法的には問題が無くとも、社会的背任の謗りをうけることが多々ある。昨今は「法的に問題がなかった」はずでも、行政が世論を受けて、指導を出すようなこともしばしばみられるようになった。
すなわち、重大な危機とは――故意による社会的背任行為は論外として――起こってしまったことに対処する方法を間違えることで、世論のバッシングを受ける。「リスク」とは、それによってブランド(信頼という大切な無形資産)が大きく損なわれる事態のことを指すのである。この移ろいの激しい「社会的責任」、そして現代の世論とは何か――最終的にはマスコミ報道によるものが大きい――について次回に述べる。
著者プロフィール
プラップ・ジャパン取締役、危機管理コンサルタント。業種や業態を問わず、「危機管理とは何か」という基本的視点から企業経営における危機管理体制の実現を日夜サポートしている。
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