SEが持っていたい10のパワー―― でも最後は人間力:間違いだらけのIT経営(1/2 ページ)
SEのIT導入に際してのかかわり方は、きわめて重要である。それだけに、SEのあり方についての議論は数え切れない。いささか食傷気味、と言っても過言ではないだろう。しかし、ここではちょっと視点を変えて検討したい。
屈指のSEの正体
SEには、ベンダーから派遣されるSEと、ユーザーにおける情報システム部門のSEとがあるが、基本的に同じとみなして以下議論を進めよう。
まず、周辺に見られるダメSEの典型を概観することから始めよう。
ERPを導入した中堅の電子機器メーカーA社から筆者は、導入後逆に業務の収拾がつかないほど混乱しているのでちょっと見て欲しいと頼まれた。筆者が、A社の情報システム部、及び経理部など業務部門の担当者にヒヤリングした結果、業務の実態と混乱の原因が分かった。
ERP導入時、ベンダーB社から社内屈指のSEだという前触れのCがリーダーとなり、SE部隊3名が乗り込んできた。Cは、たちまちA社の情報システム部長Dの心をつかんだ。CリーダーがD部長に対して、「A社でのERPを成功させ、導入手順をノウハウ化して電子機器メーカーのモデルとして商品化し、市場に出したい。A社にもノウハウ料が入る」と提案したという。Cリーダーは、確かに切れ者だったようだ。A社の幹部には、よく取り入った。しかし考え方や態度が尊大で、A社の業務部門とあまり接触せず、主に情報システム部とやり取りをし、基本的に終始ERPをA社に押し付ける姿勢だった。実は、D部長ももともと尊大で、業務部門を小バカにする傾向にあった。それはよくあることだが、情報システム部が業務部門から、常日頃「単なるコンピュータ屋だ、業務部門の下請けとしてコンピュータを稼働させていればいい」というふうに蔑視されていた裏返しでもあった。
結局、A社の実態を無視したERPとなり、Cが提案した商品化も実現しなかった。
CやDのようなタイプは珍しくない。彼らの部下も、彼らに影響される。彼らの大体の傾向は、自信過剰である、物事をマイペースで進める、ユーザーを「戦略や思想がない」と一段下に見る、ユーザーに対する好みが偏る、知らないことがあっても特に技術的なことについてはなかなか知らないとは言わない、技術重点指向でビジネスを知ろうとしないなどの特徴を持つ。技術的に優秀と言われるSEほど、このいずれかの傾向を持ちやすい。もちろん、そうでない本当の意味での優秀なSEはいる。
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