日本企業の危機、国際競争で勝つための余力を生み出せ:今こそ攻めのIT投資を(1/3 ページ)
グローバルで活躍する企業では、日夜当たり前のように業務プロセス改革が行われている。一方で日本企業の多くは業務変革に対しさまざまなボトルネックを抱えているという。日本企業が生き残るために必要な手段とは?
企業競争が激しくなるにつれ、業務プロセスの改善にも変化が生まれた。これまでのように一度変えれば終わりというのではなく、日々の業務を継続的に改善していくことが企業が生き残る条件となった。本来「カイゼン」は日本のお家芸だったはずだが、多くの企業では各部門とも既存の業務遂行で手一杯になり変革のための余力がない状態だ。日本企業に今必要な一手は何か。ガートナー ジャパンでSOA&Webサービス担当の飯島公彦バイスプレジデントに聞いた。
今の業務改革は戦略性を重視
――業務改善を意味する言葉には、主に「BPM(Business Process Management:業務プロセス管理)」と「BPR(Business Process Re-engineering:業務プロセス改革)」があります。両者の違いを教えてください。
飯島 昔から日本企業に馴染み深いのはBPRです。10年以上も前から実践されていますし、今でも多くの企業ではBPMよりBPRという言葉で業務改善を語ることがあります。BPRはすべてを抜本的に見直すという意味合いが強いです。BPMはトヨタ自動車の生産方式「カイゼン」の例にあるように、業務の継続的な改善活動に重きを置いています。この点が両者の大きな違いです。BPRは一度変えてしまえば、あとは改善することはありません。
もう1つ異なるのは、BPMは業務プロセスの可視化を重視している点です。企業競争が激しくなるにつれ、経営者はバランス・スコアカードのような企業の戦略やビジョンへの評価基準を持つ必要が出てきました。どんぶり勘定ではなく精密に経営を可視化し、ビジネスを変革する力がBPMに求められています。BPRは可視化よりも、コストカットなど業務の効率化が主目的といえます。
BPMあるいはガートナーが提唱するBPI(Business Process Improvement:ビジネスプロセス革新)は、効率化だけでなく企業の戦略性や変革のための方法論に焦点を当てています。一言に業務改善といっても、従来の考え方とかなり異なったものになっています。
ガートナーが世界のCIO(最高情報責任者)に向けて毎年実施する調査では、企業にとって重要な取り組み事項に「ビジネスプロセス改革」が挙がっています。グローバルでは2007年、2008年ともに1位です。
――同調査によると、日本でも2008年にビジネスプロセス改革が1位になっています(前年4位)。この要因は何でしょうか。
飯島 企業規模の大小を問わず、日本にグローバル化の波が押し寄せてきたのが一因でしょう。グローバル化とは、日本企業が海外へ出ていくことだけでなく、海外企業が日本に来ることも含みます。従来とは異なり日本と海外のビジネス上の垣根がなくなったことで、たとえ内需型企業でも外からの脅威にさらされるため、変革しなければ生き残れない状況になりました。こうした考えが経営トップに広まってきたのではないでしょうか。
ただしトップが頭で考えていても、実際に行動しているかという点は疑問です。トップおよび現場の社員ともに、どう動いていいか分からず苦しんでいるのが現状です。あるいは現場が分かっていても、トップが優柔不断だったり、企業に新しい行動を起こす余力がなかったりとさまざまな阻害要因が存在しています。
どの企業にも共通しているのは、失敗を恐れているということです。日本の製造業を中心に欠陥品を作ってはいけないという文化があり、「失敗=悪」という考えが染み付いています。これはITも同様です。今まさに変革の時期なのに、失敗を恐れ新たなIT投資をしようとしません。逆に行動しない理由を探そうとします。
メインフレームからオープン系システムへの移行が注目された時期によく耳にしたのは、メインフレームが悪い、オープンが良いという議論よりも、何もやらない理由を見つけることが企業内の大きな抵抗勢力にあったようです。業務部門であるほどこうした思考が根付いています。このボトルネックをどう乗り越えるかが、日本でBPMを成功させる上で大きな課題です。
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