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信用組合の合併を成功に導いたシステム統合【前編】シェアードサービス(1/2 ページ)

CIOのジェフ・コネリー氏はカナダの2つの信用組合にITを供給するためのサービス組織を設立した。同氏が取り組んだITシステムの統合に至るロードマップを分析して、成功のヒントを探る。

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 インユニゾンテクノロジーサービセズのCIO(最高情報責任者)、ジェフ・コネリー氏は勤務時間の半分を、カナダのアルバータ州にあるファーストカルガリー貯蓄信用組合(クレジットユニオン)の本拠地の奥まった場所にある質素なオフィスで過ごしている。コネリー氏はインユニゾンのCEO(最高経営責任者)であるティム・ワシリエフ氏とこのオフィスを共有している。もっとも、オフィスとはいえ、実際のところは、ごく普通のビルの裏に設置されたトレーラーハウスにすぎず、壁のぶち抜かれた部分が出入口になっている。IT部門の残りのスタッフもここですし詰め状態で働いている。「足の踏み場もないくらいだ」とコネリー氏は言う。

 コネリー氏は残り半分の勤務時間を、カナディアンロッキー山脈の向こう側、ブリティッシュコロンビア州バンクーバー郊外のラングレーにあるエンビジョンフィナンシャルで過ごしている。コネリー氏はしばらくの間、この2つの信用組合のCIOを務めていた。ただし、両組合の業務が統合されていたわけではない。それよりも、双方のCEOには「全国の信用組合のネットワークを構築し、共通のITプラットフォームで旅行中の組合員にもサービスを提供できるようにしたい、そして最終的には、ほかにも各種の共用サービスを提供できるようにしたい」という構想があった。

コストを負担し合い競争力を高める

 両信用組合は2年前、それぞれのIT部門を統合し、両組合のITインフラを管理するための合弁会社として、インユニゾンを設立した。さらに両組合は、マーケティング、販売、人事のほか、CEOとCFO(最高財務責任者)以外の経営陣も統合した。

信用組合はこれまでITの最先端とは無縁だった。今、われわれはITを活用しようとしている。これは大きなチャンスだ――インユニゾンテクノロジーサービスCIO、ジュフ・コネリー氏
信用組合はこれまでITの最先端とは無縁だった。今、われわれはITを活用しようとしている。これは大きなチャンスだ――インユニゾンテクノロジーサービスCIO、ジュフ・コネリー氏

 「われわれの目的はITサービスのほかにも、経営管理やバックオフィスなど、どの信用組合にも必要となるような各種のサービスを提供することだ。それにより、規模の経済が実現できる。つまり、多数の信用組合でコストを負担し合うことで、全体的なITコストを削減しようというわけだ」(ワシリエフ氏)。

 またこの取り組みでは、レイオフは行わずに双方のスタッフを統合する必要がある(実際のところ、働き口は増えている)。そして、瀕死(ひんし)状態の管理人しかいないようなグループを、積極的で前向きなリーダーと正式に訓練を受けたスペシャリストが大勢揃ったグループへと変える必要もある。さらには、無数のシステムにわたってビューを提供するための共通のソフトウェアプラットフォームをインストールし、競争力をもたらすようなビジビリティ(可視性)も実現したい。

 「信用組合はこれまでITの最先端とは無縁だった。今、われわれはITを活用しようとしている。大きなチャンスだ」とコネリー氏は言う。

ITにはコスト削減以上の成果が求められている

 IT関連の用語には、多くの成果を期待させておきながら、結局そうした成果を実現できずに終わってしまうものが少なくない。「共用サービス」というのもそうしたIT用語の1つだ。フォレスターリサーチが2005年に実施した調査では、87名のIT意志決定者のうち59%は、共用サービスのプロジェクトについて「ある程度しか成功していない」と評価している。こうした評価の背景には、「共用サービスのおかげで確かにコストは削減できたが、サービスを改善できたわけではない」という思いがあるようだ。

 さらに、ガートナーのアナリスト、コリーン・ヤング氏によると、中央集中型のIT組織のうち、「自分たちが共用サービスモデルを実行している」と考えている組織は3分の2にのぼるが、実際、本当に共用サービスモデルのパラダイムを実現できているのは全体の3分の1に満たないという。本来、共用サービスモデルには、コストの削減だけでなく、IT部門を戦略的ビジネスパートナーへと変革し、組織が技術投資を最大限に活用できるよう支援するという要素が含まれるからだ。

 「最近では、サイロ化された多くのIT組織がサービス指向性を高めようとしている。そうした組織には、優れたサービスとはコストを削減できるサービスだと考えている向きが少なくないが、実際のところ、それはサービスの提供方法とはまったく関係のないことだ。それでは、いくら熱心に取り組んでも、そもそもの方向性が間違っているため、共用サービスの存続に必要な文化を生み出すことはできない」とヤング氏は指摘している。

 だが、コネリー氏は、ガートナーが考えるところの「理想の共用サービスモデル」に正しく従っているようだ。それまで既に7件の合併を担当していたコネリー氏は、その経験を生かし、インユニゾンを設立した。同氏によると、両信用組合を共用サービスで統合することで、デスクトップスイートのライセンス料金を21%削減できたほか、携帯電話とメッセージングのコストは30%、新しいバンキングシステムのコストも約25%削減できたという。

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